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スペイン2季連続で久保に立ち塞がるレギュラーの壁

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日刊スポーツ

スペイン2季目を過ごす日本代表MF久保建英(19)は今季、ビリャレアルへの期限付き移籍後、まだ先発出場の機会を一度も得られていない。リーグ開幕から5試合で54分間というのはチームで16番目の出場時間である。 【写真】懸命にボールを追う久保 しかし、久保がレギュラーの座を得るのに苦しむのは今季に始まったことではなく、スペイン初挑戦となった昨季もマジョルカで時間がかかっていた。その主な理由は、ビセンテ・モレノ監督が3部、2部と共に勝ち上がってきた選手たちに大きな信頼を寄せていたため。実際、シーズン開幕時に新加入選手でスタメン入りしたのは2選手のみであり、それ以外の9選手は2部や3部で監督とともに戦ってきた選手たちだった。 久保は当時、「ピッチ内のルールを理解するのに苦労した。彼らが2年間同じことをやってきた一方、僕は新人だから」と、2段階昇格を成し遂げ、完成されたチームに加わることの難しさを明かしていた。 また、マジョルカには開幕戦後に入団し、プレシーズンを行えなかったこと、代表招集による長距離移動とその間チーム練習に参加できなかったことも、レギュラー確保に時間を要した理由に挙げられるだろう。 そのような状況の中、第3節バレンシア戦でスペイン1部リーグデビューを果たした久保は、続く第4節ビルバオ戦でPKを獲得し、第5節ヘタフェ戦で初アシストを記録するという目に見える結果を出し、監督やチームメート、そしてサポーターの信頼を徐々に手に入れていった。 久保に初先発の瞬間が訪れたのは、自身4戦目の第6節アトレチコ・マドリード戦。平日半ばの試合でローテーションを実施したという理由はあったが、久保はそのチャンスをしっかりと生かし、ポストに阻まれたものの、マジョルカ最大の決定機となるシュートを放った。世界で最も市場価値の高いGKである名手オブラクを脅かし、チームで際立つ選手のひとりとなったのだった。 その活躍が認められ、次節アラベス戦で2戦連続の先発出場を飾り、結束力の固い「ビセンテ・モレノの子供たち」の間に割って入ることができたかに見えたが、この日のパフォーマンスは低調で、チームも3連敗および6戦連続未勝利となった。 そのためビセンテ・モレノは原点に戻って再度既存メンバーを重用したことで、久保は再びスタメン落ちとなった。しかしチーム状態が再び悪くなったことやローテーションにより、第12節バリャドリード戦で5試合ぶりにスタメン出場すると、サルバ・セビージャの出場停止により2戦連続先発出場した第13節ビリャレアル戦でチャンスをものにする。久保は先制点のPKを誘発して2点目に絡み、3点目でスペイン初得点を記録し、チームに4試合ぶりの勝利をもたらせた。 全得点に絡む活躍を見せた久保はスペインメディアに大絶賛され、マルカ紙で最高評価を受け、メッシ、アザール、ベンゼマ、パレホ、バルベルデなどとともに同節のベストイレブンに選出された。 久保は当初、「バルセロナの下部組織出身選手がレアル・マドリード入団」という話題先行の感はあったが、「KUBO」の名を実力でスペイン中に知らしめた。この試合がターニングポイントとなり、皆の信頼を得ることに成功した。 その後再びスタメン落ちする時期はあったが、第25節ベティス戦からは絶対的なレギュラーとなって、スペイン初年度のリーグ戦成績を35試合(先発23試合)、2309分間出場、4得点4アシストで終えている。 久保はその実力を認められ、スペイン内外で経験豊富なウナイ・エメリ監督に求められてビリャレアル入りしたと伝えられているものの、予想以上に出場時間を得られていない。期限付き移籍での新入団選手というのが大きく影響しているかもしれないが、マジョルカの時とは比べものにならないほど厳しい環境下にいるのは確かだ。それはメンバーのうち16人が代表経験者(スペイン8人、アルゼンチン3人、コロンビア、エクアドル、モロッコ、ナイジェリア、日本各1人)という、ハイレベルな選手が多数いることでも証明されている。 加えて、ビリャレアル所属選手のスペイン1部リーグ出場試合総数は3308試合となっている。これは3449試合のレアル・マドリード、3332試合のビルバオに次ぎ、スペイン1部20クラブ中3番目に多い数字であり、ビリャレアルにスペイントップリーグでのプレー経験豊富な選手がそろっていることを意味している。 中盤から前線にかけてのレギュラークラスの出場数を見てみると、パレホ356試合、イボラ269試合、トリゲロス227試合、ジェラール・モレノ208試合、モイ・ゴメス178試合、パコ・アルカセル168試合、バッカ161試合、チュクウェゼ68試合、コクラン64試合、そして久保は40試合となっている。誰もが久保よりスペイン1部リーグでの経験値が高く、多くの選手に昨季もビリャレアルでプレーしていたことで、チームにフィットする時間を必要としていないというアドバンテージがある。 さらにエメリ監督が9月28日のバルセロナ戦に0-4と大敗した後、ワントップにシステム変更し、チームのナンバーワン選手であるジェラール・モレノを久保の得意な右サイドハーフで起用し結果を出していることが、久保のレギュラーへの道をさらに険しくしている。 これらの要素が大きく影響し、久保は昨季同様、このシーズン序盤で監督の大きな信頼を得られず、レギュラー獲得に向けた大きな壁に直面していると思われるが、「今はまだ適応段階」というエメリ監督の言葉を信じるならば、いずれチャンスが訪れるだろう。 しかし、シーズンはまだ7カ月残され長いように感じるが、リーグ戦はすでに8分の1を消化しており、そのチャンスがいつ訪れるのか悠長に待ってはいられない。そのため昨季のビリャレアル戦のように周囲が放っておけないほどのインパクトを残すことが、現状を早急に打開する上で重要となる。 そのような状況の中、今季のチーム得点王であり昨季のスペイン1部リーグ得点ランキング3位のジェラール・モレノがスペイン代表で負傷し、2~3週間欠場することはチームにとっては不幸だが久保にとってチャンスとなる。そして来週から欧州リーグが3週連続で開催されることは久保に追い風となるはずだ。 3週間にわたる過密日程を迎える中、エメリ監督がローテーションを実施すると推測されているため、久保にはこれまでの5試合に比べ、大幅に出場時間を得られる可能性がある。すでに昨季示したように、与えられたチャンスを確実にものにしていけば、自ずとレギュラーの座が見えてくるだろう。 【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

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