「無感覚になりたかった」 フランスで若い女性の自殺行動が急増。その要因は?
「無感覚になりたいと思った」
こうした状況のなか、また別の重要なポイントも明らかになりつつある。パンデミックの影響で、若者たちへのケアが行き届いていない点だ。各種施設で窓口業務が休止し、リモート診療が行われ、順番待ちリストができている。「コロナ禍以降、心理カウンセラーのもとには患者が殺到しています。需要が多くなれば供給は追いつかず。そのために孤立感が一層強まってしまう」。モロが最近頻繁に耳にする言葉は次のようなものだ。「無感覚になりたいと思った」、「私には何の価値もない」、「話を聞いてくれなかった」……。 通常、学校は自己肯定の過程において決定的な役割を果たすが、度重なるロックダウンで学校も休校しがち。比較的強い子どもたちにさえ影響が出ている。自己肯定感の低さは、現代のティーンエージャーによく見られると、モロは指摘する。彼女が形容するように、まさに「時代の病」だ。「少女たちにあまりに多くの要求をしている…」とモロは苛立ちを隠さない。 思春期には身体にさまざまな変化が起こるけれど、自分の中に閉じこもっていてはその変化を理解することが難しい。「人生に生きる価値はないという感情は、本来なら学校で培われる自信、つまり自らのアイデンティティを肯定する気持ちと関連しています。思春期の少女にとっては、自分の居場所を見失ったり、友人たちに対して仲間意識を持てなくなったり、グループからはみ出してしまうと、拠り所が一切なくなってしまう」
現実としての死
そしてパンデミック以降、若者たちは死や病をより強く意識するようになっている。「もちろん、男子にとってもそうですが、女子にとって、死はリアルなものになりました」とモロは言う。さらに悪いことに、パンデミックによって死は強い孤独感に覆われることになった。「たった一人で、マスクをしたまま亡くなった祖父母を目の当たりにした子どもたちもいます。パンデミックで死がありふれたものになったかどうかはわかりませんが、喪の儀式がより困難になった、さらにいえば、ほとんど不可能になったのは確かです」 (1)Marie Rose Moro著『Et si nous aimions nos adolescents』Bayard出版刊。
text : Lea Mabion (madame.lefigaro.fr)