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続きが待てないストーリー、ピーキーな画風…異例だらけで実現する面白さ、アニメ『GREAT PRETENDER』鏑木ひろ監督に聞く

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<TVアニメ『GREAT PRETENDER』鏑木ひろ監督インタビュー・前編> Netflixで好評配信中、7月8日よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて地上波オンエアされるアニメ『GREAT PRETENDER』(グレートプリテンダー)。本作は、監督を『君に届け』『鬼灯の冷徹』で知られる鏑木ひろ、脚本を『ALWAYS 三丁目の夕日』『コンフィデンスマンJP』など映画・ドラマ界のヒットメーカー・古沢良太、『新世紀エヴァンゲリオン』『サマーウォーズ』で知られる貞本義行がキャラクターデザインを手がけ、『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』で実力を見せつけたWIT STUDIOが制作する、最強チームによるオリジナルアニメーションだ。 【画像】アニメ『GREAT PRETENDER』場面写真 ハリウッド映画に例えるなら、『オーシャンズ11』や名作『スティング』などに代表される痛快なクライム・エンタテインメントの要素がてんこ盛り。そんな『GREAT PRETENDER』の制作秘話とあらゆる見どころを、鏑木ひろ監督が語ってくれた。今回はインタビュー前編として、本作がさまざまな面から志向した「映画的」なアニメーション制作の裏側に迫る。 取材・文 / 阿部美香 構成 / 柳 雄大 ◆視聴者を「いかに綺麗に騙していくか」─“騙し合い”もの特有の難しさ 【『GREAT PRETENDER』あらすじ】 自称“日本一の天才詐欺師”の青年・枝村真人(愛称・エダマメ/CV:小林千晃)は、一攫千金を夢見て、東京で詐欺師仲間とともに小さな詐欺を働く日々を過ごしていた。そんな彼と偶然出会ったのは、ローラン・ティエリー(CV:諏訪部順一)という外国人観光客。エダマメはいい獲物だとローランに詐欺を仕掛けるが、逆に騙されて大金を奪われてしまう。ローランの正体は、マフィアすら手玉にとるコンフィデンスマンだった! ひょんなことからアメリカ・ロサンゼルスに渡ることになったエダマメは、ローランが仕掛ける巨大なコン・ゲームに巻き込まれていく──。 ーー 本作はアニメオリジナルの作品だけに、いわゆる原作付きのアニメと比べても準備期間が長かったと伺いました。企画はいつ頃から? 【 鏑木監督 】 手元に残っていた古いメールによりますと……僕に監督をやらないかとWIT STUDIOの和田丈嗣さんから声が掛かったのが2015年の秋。その前から脚本の古沢(良太)さんと和田さんがひそひそやっていたみたいで…(笑)、企画はもっと前から進んでいたみたいです。「詐欺師の話がやりたい」という古沢さんのアイディアありきの作品ですね。 ーー これまでのアニメ作品にも、キャラクターとして詐欺師が登場するものは数ありますが、詐欺師が中心人物の騙し騙されな“コン・ゲーム”そのものを題材にしたものは少ないですよね? 【 鏑木 】 そもそも詐欺師モノはシナリオが大変なんですよ。綿密な伏線はもとより、必要な情報を適切な順番通りに提示していかないと受け手は『騙された』と感じてくれないじゃないですか。 ーー 劇中の騙し合いだけでなく、視聴者をも上手く騙さないと面白くならないですよね? 【 鏑木 】 みんなをいかに綺麗に騙していくかがキモなので、話の整合性をしっかり押さえておくことが重要なんですね。そこを作り込むのは大変だし、そもそも売れるか判らない。やったらやったで面倒くさいですし(苦笑)。その面倒くさい題材を、古沢さんがアニメに落とし込む。果たしてどんなシナリオになるのか?…読んで納得の出来でした。 ーー 詐欺師が人を騙す話といってもいろいろなパターンがあると思いますが、東京からロサンゼルスに舞台が移ったりと、本作の詐欺のスケールが壮大で痛快なものになっているのにワクワクしました。 【 鏑木 】 そうなんですよね。人からお金を騙し取るだけの騒動なら、そう大きな仕掛けはいらない。誰かが誰かを信じる・信じないを成立させる人間関係さえ押さえておけば。古沢さんが持ち出してきたこの世界規模のスケール感は、『アニメ表現への信頼』だと勝手に思ってます。ただ、詐欺師ものをやりたいと聞いた時は、正直不安でして……。 ーー どうしてですか? 【 鏑木 】 古沢さんのプロットを見るまでは、「オレオレ詐欺」とかの、現実に身近に起こってる様な話かと思ったんです。でもフタを開けてみると、華やかな信用詐欺師が主役で派手に悪党だけを騙す漫画っぽいお話。これならエンタメとして安心して取り組めるなと。 ◆「1時間半ぐらいの映画を丸々一本作る感覚」でスタートした異例の脚本作り ーー クライム・エンタテインメントという言葉が本当に良く似合う作品だと思います。古沢さんはアニメのTVシリーズの脚本は初めて書かれたわけですが、制作チーム内でいつもと違うことはありましたか? 【 鏑木 】 シナリオは、2016年~2017年あたりに本格的にガーッとすごい勢いで作っていったんですね。それは、和田さんが、シナリオが全部上がってから現場作業に取り組みたいと盛んに言っていたからで。 ーー 通常のTVシリーズもそうですが、TVドラマの場合でも、シナリオは徐々に上がっていくという話をよく聞きます。 【 鏑木 】 普通のTVシリーズだと、だいたい1話が20分程度になるように、1話ずつ書いてもらうんですが、今回は台詞の長さや中身を調整しながら、1時間半くらいの映画を丸々一本作る感覚でCASE.1の1~5話をごそっと書いてもらい、そこから話数を分けていく作り方をしています。 ーー それは珍しいですね。 【 鏑木 】 僕も初めてでした。あんまりやらないですよね(笑)。とくに今回のような話は、人間関係を作り込んだり伏線を張っていくにしても、こういうキャラの方がいいとなったら前に戻って整合性を取るために直さなければならない。結局、古沢さんの負担が大きいのは承知の上で、今回の工程になりました。 ーー ちなみに……古沢さんと鏑木監督は初仕事になりましたが、古沢さんにどんな印象を持たれました? 【 鏑木 】 僕が今まで一緒にやってきたアニメ脚本家の方とは、かなりタイプが違いましたね。古沢さんはとても控えめで思慮深く、真面目でストイック。個人的な偏見で云わせて貰うと、テレビ業界の人というよりは町工場の職人のような感じ…ですかね。打ち合わせ中はあまり『ノリ』で会話はせず、考えを整理して話される。ガチャガチャせずにゆっくりと優しい時間が過ぎていく感覚で、とても新鮮でした。 ◆本作独自のルック(画風)が生まれていったロジック ーー 実際に拝見しても、TVアニメらしからぬ映画的な作品だというのが良く分かります。 【 鏑木 】 私見ですが、映画的かどうかというのは尺の問題が大きいと思います。ただ、CASE毎の尺が一時間半あるからと云ったって、TVシリーズの予算で作ってる以上、映画の規模感にはトータルではまず勝てない。まぁ、そもそも勝ち負けもありませんが…。とりあえず映画っぽく観せるには何が効果的かと考えて、BG(背景美術)のルックを作っていったというのは、戦略としてはありますね。 ーー たしかに、背景美術のデザインも色調も、絵画やイラストを想起させる。個性的なルックに目を引かれました。 【 鏑木 】 ルックに関しては、最初はもっと版画調でやろうとしていたんです。スケールが大きなエンタメなので、スーパーリアル系のBG(背景)だとパンチが弱い。もっと漫画っぽくしたくて、ブライアン・クックスという版画家の作品をチームの若いイラストレーター・syo5くんに渡して、全話分のイメージボードを描いてもらい、それを美術監督の竹田(悠介)さんに渡して、今の感じにブラッシュアップしてもらってます。 トライ&エラーの結果、当初想定していた版画調ではなくなってしまいましたが、ここまで風変わりなBGはないんじゃないですかね。ちょっとピーキーすぎるかな?とは思ったんですけど(笑)、今回の美術スタッフでなければ、このルックは実現できなかったです。あと「大量生産しづらい」のが凄いツボですね。 ーー スーパーリアルな背景ではパンチが弱いというのは、どういう点で? 【 鏑木 】 世界観的には当然アリなんですけど、今は インターネットなどを使えば、現実世界が見られちゃうじゃないですか。映画もそうですけど、本物の場所をそのまま舞台にしたほうが当然リアルなんですよ。それにインパクトで勝てるか? 言われたら、いくらアニメでも特色として勝てないわけです。悲しいことに、ちゃんと取材をしてスーパーリアルに背景を描いても、「写真加工しただけでしょ?」と言われかねないんです(苦笑)。 ーー ああ! 【 鏑木 】 あと、描いた結果が面白いかどうかもあると思うんですよ。僕は、竹田さん率いるバンブーさんと一緒にやるときは、変わったBGでいこうと心の中で決めてます(笑)。『君に届け』では水彩っぽい雰囲気、『鬼灯の冷徹』でも地獄の世界を水墨画等で表現してもらっていたので、『GREAT PRETENDER』も新しい画風にチャレンジしたかった。竹田さんも「僕とやるときは、ヘンなオーダーが来る」と思ってますね(笑)。 ーー CASE.1を拝見していても、アメリカ西海岸の乾いた陽射しの強い空気感にピッタリな背景だと思いました。 【 鏑木 】 そうですね。最初に作った作業者向けのお試しPVでロスの風景を作りましたが、プールサイドの風景や青空が映えたカラッとした空気感が出てて手応えを感じたのを覚えてます。CASE.2からはまた舞台がシンガポールに変わりますが、彩度や季節感を調整してもらって現地の雰囲気を出して貰ってます。 (インタビュー後編につづく) (c)WIT STUDIO/Great Pretenders 続きが待てないストーリー、ピーキーな画風…異例だらけで実現する面白さ、アニメ『GREAT PRETENDER』鏑木ひろ監督に聞くは、WHAT's IN? tokyoへ。

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