国際的に活躍する医学博士に聞く!インフルエンザと新型コロナ、同時にかかる可能性は?
例年、冬になると流行するインフルエンザに加え、今年はさらに新型コロナの流行もあり、二つのウイルスに同時に感染したらどうしようと不安の声が上がっていた。内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり国際的に活躍中の医学博士 根来秀行さんに「同時感染」について詳しく聞いた。
同時感染は稀だが同時流行の可能性はゼロではない
インフルエンザの流行シーズンである冬になったら、新型コロナとインフルエンザが同時流行し、「ツインデミック」が起きるのではないかと心配されていたが、現在のところ、インフルエンザの感染者数は例年より大幅に抑えられている。 「日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬~12月上旬に始まり、翌年1~3月にピークを迎え、 4~5月にかけて減っていく傾向にあります」と根来教授。 厚生労働省によると、1月になっても全国的な流行期に入らなかったのは、過去16年で初めてだという。 「インフルエンザは1医療機関あたりの1週間の患者数が、全国で1人以上になった場合、『全国的な流行期』に入ったとされますが、現時点では0.01人と大きく下回っています。 新型コロナとインフルエンザの同時感染については、そもそもウイルスの重複感染自体がレアケースです。『ウイルス干渉』といって、あるウイルスに感染するとそれに対する免疫応答が起こって、その他のウイルスの増殖が阻害されるため、重複して感染することは稀なのです」 ただ、少数ではあるが、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時感染も報告されており、アメリカやイギリス、中国、日本でも報告が上がっている。 「その場合、重症化する傾向があり、イギリスの研究では、コロナウィルスだけに感染した患者に比べて死亡するリスクが2倍になるという報告もあります。 インフルエンザもコロナと同じ変異しやすいRNAウイルスなので、接種したワクチンで免疫が得られずインフルエンザにかかったり、予測されていたインフルエンザと別の型のインフルエンザにかかってしまうということもありますが、一定の効果は認められています」 最近の研究では、ワクチンを摂取すると免疫細胞が鍛えられて、自然免疫が訓練され、未知のウィルスに抵抗する力がつくともいわれている。これが、日本で新型コロナの被害を抑えられている一因とする説もある。 「生活習慣病や持病を抱えている人など、新型コロナの重症化リスクが高い人は、インフルエンザワクチンを受けておくのもいいでしょう。僕も毎年受けています。 インフルエンザのハイシーズンはまだまだ続きます。今シーズン、これからインフルエンザの患者数が急増する可能性もゼロではありません。昨春から続く新型コロナ対策が、インフルエンザの予防につながっていることは間違いないので、引き続き、ソーシャルディスタンスを保ち、手洗いやマスクなどを徹底していきましょう」 教えてくれたのは 根来秀行さん 1967年生まれ。医師、医学博士。ハーバード大学医学部PKD Center Visiting Professor、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授、社会情報大学理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。本連載から生まれた『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(ともに集英社)が好評発売中 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子