50代・松本明子さんの「実家じまい」。コストも年月もかかったけれど、後悔はゼロ
父の愛した家が200万円でも売れない!?
――実家じまい、なにがいちばん大変でしたか? 松本:実家に残された膨大なものの片づけですね。新幹線や飛行機も使いましたけど、東京から車で片道12時間かけて実家に帰り、掃除や片づけをして、夜中、運転して東京に戻るというのを7往復しました。 ――片づけと同時に、不動産屋さんに相談をされていたのですよね? 松本:土地込みで1000万円ぐらいにはなるだろうし、すぐに売れるだろうとタカをくくっていました。でも、査定結果は「上物の価値ゼロ。土地の価格で200万円」。 ――リフォームまでしたのに。 松本:不動産屋さんからは建物を壊して更地にした方が買い手はつきやすいと言われたのですが…。その更地にする費用が500万円と言われて。なんじゃそりゃ!? と。結局、ダメもとで高松市がやっている「空き家バンク」に登録して、そこで買い手が見つかったんです。「今すぐ住める」と、気に入っていただけて。
実家の片づけが、思い出と向き合う時間に
――人手に渡ったにせよ残すことができたのは、よかったですね。 松本:取り壊して更地にしたら、父は悲しむだろうなとも思っていたので。肩の荷が下りました。ただ…それで終わりじゃなかったんです。「今すぐにでも住みたいので、早急に家の中をからっぽにしてください」と言われまして。 ――片づけは終わってなかったのですね。 松本:これで安心と思ったのも束の間、大ショックです。急いで片づけなきゃ! ということで、実家近くの健康ランドに泊まり込んで、朝から晩まで片づけをしました。 ――それは大変でした。 松本:父も母も昭和一桁生まれで、ものを大切にする人で。まぁ、捨てない。私と兄のものも全部、取ってあって。ため息をつきつつ、大事にされていたんだなぁとあらためて思いました。 ――すべて片づくまでどのくらいかかったのですか? 松本:1週間かかりました。東京に持って帰るもの、人に譲るもの、リサイクルに回すもの、全部仕分けをして。行き先がないものは処分して、その量は2tトラック10台分。100万円かかりました。最後の片づけのために、東京と高松を往復した交通費、宿泊費も10万円ちょっとかかりましたね。 ――業者にまかせようとは思わなかったのですか? 松本:両親が残したものは2人が生きてきた証しだから、全部自分で目をとおそうって。片づけは思い出と向き合う時間にもなりましたし、結果、後悔なくできました。 ――実家じまいを経験されて、松本さんに変化はありましたか? 松本:自分自身の終活ですよね。息子が私と同じ思いをすると思ったら、自分の身の回りのものは捨てても捨てられてもいいものでいいやって。“もの”ではなく、心の中に“思い出”をためていこうと思っています。
ESSEonline編集部