鎌倉が「タクシー運転手に人気」である面白い事情
コロナ禍における行動制限の緩和により、少しずつだがタクシー業界にも客足が戻りつつある。もちろん地域差はあるが、例えば都内ではいまだ稼働台数に制限はあるものの8割近くまで水揚げ(売り上げ)が戻ってきた、という声をよく聞くようになった。中でも鎌倉のタクシーがいいようだ。そんな声を知人のドライバーたちからよく聞いた。 【写真】鎌倉駅東口で待機するタクシー 今年1月に鎌倉市に訪れた際、駅で待つドライバーたちと談笑したときは、「厳しいね」と口をそろえていた。実際に当時は観光客も戻っておらず、予測された答えでもあった。
ただ、その内情を掘り下げていくと古都・鎌倉を取り巻くタクシー事情がよく理解できる。 ■コロナ禍でも高水準の売り上げが保たれている 「先月は6万円いったけど、今月は5万円に届くかどうか」 「迎車と付け待ちで計算が立つのがこの街のタクシー」 彼らの声を総括していくと、元々の売り上げ水準が高く、コロナ禍でもかなり高水準が保たれているということが見えてきたのだ。 GW前の5月に訪れた際はより顕著だった。平日でも5万円以上に届き、大型連休中もコロナ以降で最高の売上高だったという声が大半を占めた。
興味深かったのがドライバーたちは鎌倉出身の者はほとんどおらず、近接や遠方からのちょっとした“出稼ぎ”も多いということだ。つまり鎌倉という地は、ドライバーがわざわざ働きにくる場所もあるといえるだろう。 なぜ鎌倉はタクシードライバーに人気のあるエリアなのか――。その全貌に迫った。 国勢調査によれば、鎌倉市の人口は約17万2000人(6月1日時点)。個人タクシーの営業許可が下りる「人口おおむね30万人以上」にも該当せず、決して大都市というわけではない。
高齢者の人口比率が極めて高いという特徴もある。2021年1月時点で、60代以上の人口は約6万3000人を数える。50代以上も加えると約9万人と、人口の半数以上を50代が占めるという地域でもあるのだ。 創業70年、鎌倉エリアを主軸に4つのタクシー会社を運営する「KGグループ」の代表、大崎厚郎さんはその地域性をこう表現する。 「観光客も多いエリアですが、地元の方の利用が約8割を占めます。特徴的なことは2つ。1つは狭い道が多いため、バスなどでアクセスしにくい場所も多く、タクシーの日常使いがかなり多いことです。