Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

コロナショックで「タワマン冬の時代」に突入するのか 大規模修繕のラッシュも到来

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
税理士ドットコム

新型コロナウイルスの感染拡大で、国内経済の先行き不透明感が出る中、不動産市場への影響もささやかれ始めています。東京五輪・パラリンピックの1年延期が決まり、東京湾岸に立つタワーマンションの資産価値や入居時期にも影響が出そうです。不動産問題に詳しく、マンション管理士の資格も持つ宮路幸人税理士に、都心のタワマンや地方の不動産の今後を聞きました。(ライター・国分瑠衣子) ●仕事がなくなり、ローンが払えなくなる人も出てくるのではないか ――新型コロナウイルスの感染拡大や、東京五輪・パラリンピックの延期で、都心のタワーマンションの資産価値にどのような影響が出るのでしょうか。 「新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなったり、給料の手取り額が減少した場合、ローンが払えなくなる人も出てくるのではと心配しています。そもそも五輪が終わったらマンション価格が下がると言われていた矢先に、新型コロナウイルスが発生して景気の先行きが見えなくなりました。マンションを買おうという雰囲気ではなくなってきたと思います。 東京五輪・パラリンピックの延期の影響も大きいです。五輪の選手村で、大会後は改修してマンションとして分譲される東京・晴海の『HARUMI FLAG』など臨海部にタワマンが建っていますが、五輪が延期になれば、入居開始時期にも影響が出てくるでしょう。 マンションを買う人は、子どもの小学校入学など家族のライフイベントを考えながら、購入計画を立てます。入居開始が遅れると、教育や家族の暮らし方の問題も出てきます。また、今住んでいる家の家賃を払いながら、ローンを払うのかといった問題もあります。今回はウイルスという不可抗力のものなので、不動産会社に責任を押し付けることは難しいでしょう」 ●マンションの価値を維持できるのは一握り ――2000年ごろから都心を中心に、設備や立地の良さをうたうタワーマンションが増えてきました。「タワマンは資産価値が高い」と言われてきましたが、こうした評価が変わってきているということでしょうか。 「全体的な傾向としては、人口減少が進み空き家が増加する中、将来的にマンションを含めた不動産の資産価値は下がる可能性が高いです。私の知人にもいますが、タワマンが建ち始めた2000年やアベノミクスが始まる前ぐらいに購入した人は、価格が2000~3000万円上昇したという人もいます。 値上がりした時に売却した場合、住んでいた分の家賃はタダですし、売却益は居住用の場合、税金が優遇されます。売ればお金が手に入る。こういう理由でタワマンは人気がありました。さらに相続税対策としても節税につながるのでタワマン購入が『賢い投資』とされました。 それが2019年10月の台風19号で、神奈川県川崎市の武蔵小杉のタワマンが浸水被害を受けると、タワマンのデメリットが知られるようになり始めました。また、建築費の高騰などにより価格が上がり続けるので購買意欲が鈍り、19年の首都圏のマンションの新規発売戸数は低水準になっています。 マンションは立地がほぼ全てで、都心であるか、また駅からどのぐらいの近さなのかが重要になります。山手線の内側という都心である場合、需要が強いためあまり値崩れは起きません。また、若い人は部屋の広さよりも都心に住む利便性を重視するため、コンパクト住戸と呼ばれる狭いマンションの人気があるといいます。それ以外のマンションが将来的な資産価値を持たないとは言いませんが、7000~8000万円で購入したマンションの価値を維持できるのは一握りだと思います。 また、購入後は管理費や修繕積立金を負担し続けなければならず、これが大変です。相続が原因でマンションの空き家も増えてきています。立地が良くないマンションを投資目的で買った人は、どこかのタイミングで売り払うことを考えるのも方法です。 そもそもタワマンは共有物件で、あれほど多くの世帯が集まって物事を決めようと思っても決まりません。また、仕事から疲れて帰ってきて、マンション住民の会議に出たいと思う人は少ないのではないでしょうか。 マンションの場合、共用部分の重要な変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要になります。建て替え決議に至っては区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要となります。これが足かせになって、建て替えが進まないこともあります。これは民法の区分所有法に基づくものですが、しばりが強すぎるので、将来的には改正される必要があると思っています」 ●4割のマンションで管理費滞納が発生、大規模修繕に多額費用 ――管理費の滞納も問題になっています。 「2018年度の国交省の調査では、管理費などの滞納者がいないマンションは6割というデータがあります。逆に言えば、4割のマンションは滞納者がいるということです。投資用にマンションを買った外国人の中には、将来の修繕は自分とは関係ないので最初から管理費を払わないという人もいると聞きます。また、年金生活になって払えなくなったというケースもあります。管理組合が機能すればいいのですが、実際、滞納者から回収するのはとても難しいのが現実です。 新潟県湯沢町のリゾートマンションでは、販売価格が10万円とタダ同然で売られている物件もありますが、管理費の未払いが200~300万円あるところもある。これは湯沢町に限らず全国のマンションで起こっています」 ――一時、アジアの富裕層が都心のタワマンに投資していました。 「タワマンが人気になり始めた頃に買って、今は手放し始めています。タワーマンションも建設が始まって最初の10年ほどは、物件の価格も上がり、貸しても家賃がとれてうまみがありました。今は1回目の大規模修繕の時期に入ってきていて、多額の費用がかかることが予想されます」 ――“終の棲家”として買うにはタワマンは適さないということでしょうか。 「もちろんマンションは良い面もあります。戸建てに比べて駅が近くて利便性が高いため通勤が楽です。また、オートロックで施錠が一カ所で済み、セキュリティも高い。2階がないので、高齢者が暮らしやすい。ですが修繕積立金や管理費といったコストがかかります。 一方、戸建てはマンションのように立地の良い場所には建てられませんが、自分の意志で修繕の時期などを決めることができます。これから不動産の資産価値は下がり、住居が余る時代に入っていきます。中古物件を安く買ってリノベーションするのも方法の一つです。 新築でなければ、という人は別ですが、中古のマンションは狙い目です。リーマン・ショックの時など景気が悪い時のマンションはきちんと作られていることが多い。今のマンションは人件費が上がっているので、値段は高いが部屋のつくりが甘いと指摘する専門家もいます」 ――デベロッパーのフォローはあるのでしょうか。 「大手不動産会社は、基本的にマンションを作って売るところまでです。本来は売った後の管理までフォローすべきですが、関連の子会社などに委託するケースがほとんどです。せっかくなので最後まで面倒を見てあげればいいのにと思いますが、何かトラブルが生じても『管理は管理組合の話だから』という感じになってしまっています。ずっと面倒をみるのは無理だとしても、せめて2回目の大規模修繕の時期の30年間ぐらいはもっと責任を負ってもいいのではと思います」 ●タワマン節税は今も有効 ――一時、相続税対策として「タワマン節税」が流行しました。メリットはまだあるのでしょうか。 「2017年の税制改正で固定資産税の計算方法が見直されましたが、財産評価は変わっていないので、大きな影響はなく、基本的に節税になります。もともと不動産を買うことは評価額がさがるため節税になりますが、特にタワマンは効果が大きいです。 これはマンションの場合、共有物件のため土地の持ち分が小さくなり、相続税評価額が低く抑えられるためです。マンションの戸数が多くなればなるほど、一戸当たりの土地の持ち分が小さくなり、相続税評価額は低くなります。タワマンが節税に効果があると言われているのはこのためです。さらに人に貸している場合は、貸家の評価額があるため、さらに有利になります。 他にも一時流行したスキームとして、会社設立とタワマン購入を組み合わせることで、贈与税や相続税の負担をゼロにするというものがありました。しかしこれもタワマンの資産価値が維持されている場合が前提となります。また極端な節税方法は国税庁に否認されています。国税庁が評価方法を見直さないのは、マンションは将来的にみて、大して価値があるものではないという見方をしているからではないでしょうか。だとすればさすがだと思います」 ――賃貸物件はどうでしょう。それほど変わりませんか。 「分譲マンションは景気に左右されますが、賃料収入は安定しているのでそれほど影響は受けないのではと見ています。ただ、今後は空き家の問題が大きくなると思います。日本国内の所有者不明の物件を全て合わせると、九州ほどの広さになると言われています。 現状では不動産の登記は任意で費用がかかるため、相続があっても登記しない人が多いのが問題だと思っています。名義が亡くなった人のまま放置されれば、法定相続人が分からなくなる可能性があり、不動産の有効活用ができません。今年秋に法改正で登記を義務化するなどの動きが見込まれるため、今後に期待したいところです」 ●地方のアパート経営は社会問題化する可能性も ――東京以外の不動産の動向はどうでしょうか。 「大阪や名古屋といった大都市はそれほど悪くないと思いますが、人口が急減する地方都市は厳しいでしょう。地方でよく見掛けるのが、大手サブリース会社などが展開するアパート経営です。相続税など節税対策を全面に出して一時建築ラッシュとなりましたが、建築する際の見積もりが甘いケースが多いため、年数が経つと入居率が落ち、サブリース額が減額される場合が多いです。 オーナーは家賃保証しているのに話が違うと怒りますが、家賃を保証約束しても金額は空室率などにより見直しできる条項が入っているので減額は可能です。このため資金繰りが行き詰まり、借り入れを返せない人が増えています。いずれ社会問題化する気がします。 そもそも地方では、持ち家があって一人前という考え方が強く、賃貸需要が少ないため、地方のアパート経営がうまくいくのか疑問です。子どもの立場になっても、親が相続税対策として建てた不動産をもらうよりも、相続税を払っても現金をもらったほうがいいですよね」 ――マンションのほか、オフィスやホテルはどうでしょうか。インバウンド需要や東京五輪に向けてホテルは建設ラッシュでした。 「ホテルは少し作りすぎてしまった感がありますね。京都など観光地でもっとも不足していたころは、ビジネスホテルでも一泊30,000円というケースもありましたが、新型コロナウイルスの影響で、インバウンドが減る今のような展開になると厳しいですね。新型コロナウイルスも長期化する様相です。 不動産を取り巻く環境は、バブル崩壊やリーマン・ショックなどで30年前からは考えられない状況になっています。人口が減少しても不動産の価値を維持するために、方策を考えていく必要があると思っています」

弁護士ドットコムニュース編集部

【関連記事】