満を持して… プレー中のけがを克服、試合に臨む選手たち センバツ交流試合
15日から後半戦が始まる2020年甲子園高校野球交流試合。出場選手の中にはプレー中のけがを克服して試合に臨む選手たちがいる。半年以上も野球ができなくなったり、今もけがの後遺症が残ったりと試練の時期を過ごしたが、その経験で貴重なものを得た選手たち。それぞれが特別な思いを持って甲子園のグラウンドに立つ。 【写真】この試合に懸ける 投打の注目選手 ◇裏方でチーム支え 仙台育英・吉原捕手 第4日第3試合に登場する仙台育英(宮城)の吉原瑠人捕手(3年)は19年春の東北大会でバントを狙った際、ボールがバットをかすって顔に直撃。右の眼窩底(がんかてい)を負傷した。「当たった瞬間、しばらく野球できないだろうなと覚悟した」 6月から7カ月間は治療に専念。同年夏の宮城大会や甲子園、その後の秋の大会もベンチの外から見守るだけだった。「みんなと野球をやりたい」と思ったが、須江航監督(37)と話し、「あせらず治すことに専念しよう」と切り替えた。 そうした中、昨秋に就任した副主将の仕事が転機になった。主将や練習メニューを管理するグラウンドマネジャーを補助しつつ、その傍らで多くの仲間と話し込んだ。ベンチから外れた選手、けがをした部員、思い通りにいかず落ち込む仲間……。「同じように悩んでいる人の考えを聞けた」ことで、復帰後はチームのためにプレーしようと心に決めた。 けがはほぼ完治したが、日差しが強いと投球が見えにくいことも。慣れるため多くの球を受ける練習を重ね、夏の宮城独自大会には出場がかなった。須江監督は「いろいろな悩みがある中で、常に周りに声をかけていた」とねぎらう。 登録選手が例年の大会の18人から20人に拡大された交流試合。3年生の投票で「チームを支えてくれた」と残り2人に選ばれ、背番号19を受け取った。甲子園では「3年生部員40人、みんなの思いを背負ってプレーする」と意気込む。 ◇ボールの恐怖に勝つ 智弁和歌山・綾原選手 最終日の第6日第2試合に登場する智弁和歌山の綾原創太選手(3年)は昨秋の近畿大会で打球を右目に受けて骨折した。入院し、復帰まで約1カ月。光の調整に後遺症があり、日差しの強い日にはまぶしくてボールが見えにくくなった。 「けがを言い訳にしたくない。前よりも成長する」。ボールへの恐怖心と闘った。基礎のゴロ捕球からやり直し、とにかくノックを受けた。もう怖さはない。「けがをしたことで、一から動きを見直せた」。捕球から送球までよりスムーズに動けるようになった。 復帰した12月、監督からサングラスを手渡された。3年生全11人がお金を出し合ったという仲間の粋な心遣い。和歌山独自大会ではサングラスを着けて二塁を守り、失策ゼロ。陽光の照りつける夏の甲子園でも仲間の思いの詰まったサングラスを着け、成長して変わった姿を見せるつもりだ。【滝沢一誠、橋本陵汰】