〝パリの涙〟を活力に。日本男子バレーは「SVリーグ」で新時代へ「世界最高峰を目指す」
そして今シーズンは、10月11日、新たにSVリーグが開幕する。「世界最高峰を目指す」と銘打つリーグで、男子は10チームの編成だ(女子は14チーム)。 昨季Vリーグを制したサントリーサンバーズ大阪は、髙橋 藍がイタリアから戻り、代表ミドルブロッカーの小野寺太志、リーグMVPセッター・大宅真樹も在籍。準優勝の大阪ブルテオンは、オポジットの西田、ミドルブロッカーの山内晶大、リベロの山本智大ら日本代表選手を数多く擁する。 開幕で熱戦の火ぶたを切る2強に対し、ジェイテクトSTINGS愛知がセッターの関田誠大、オポジットの宮浦健人、ミドルブロッカーの髙橋健太郎ら、パリで戦った代表選手で挑む構図か。 SVリーグでは「世界」を感じながら、〝推し〟の選手も見つけられるはずだ。 「(リベロとして)世界トップレベルにきたので、あとはどの試合でもコンスタントに力を出せるように」 パリ五輪前にそう語っていた〝世界最高リベロ〟山本のディグ(スパイクレシーブ)も必見だろう。激闘となったイタリア戦も、3本連続のディグや神がかったワンハンドのレシーブを披露。その光景はたとえバレー初心者でも、心が沸き立つものがあった。 ほかにも、東京グレートベアーズの元代表アウトサイドヒッター・柳田将洋や、パリ五輪に出場したポーランド、ブラジル、アメリカ各国の代表選手も集う。やはり女性人気が高く、昨季ジェイテクトでプレーした高橋慶帆(法政大3年)はパリ・バレー(フランス)に挑戦するが、新鋭の台頭があるだろう。 この状況、かつてのサッカーに似ていなくもない。 1990年代前半、Jリーグが開幕し、三浦知良、ラモス瑠偉、武田修宏らの人気が跳ね上がった。結果、日本代表はアジアを席巻。サッカー選手の知名度はかつてないほど上がり、ブームになった。 〝ドーハの悲劇〟で悲願のW杯出場は逃したが、多くの人がその瞬間を共有し、盛り上がりは加速した。中田英寿のような奇才も生み出したのだ。 今やサッカー代表は7大会連続でW杯に出場し、創設30年以上のJリーグは多くの選手を海外に輩出している。 男子バレーを取り巻く環境は、当時のサッカーと必ずしも同じではない。異なるのは、男子バレーがすでに世界トップレベルにあること。ただ、代表で味わった敗北は、新リーグに活力を与えるはずだ。 「バレーボールを、夢のあるスポーツにしていきたい」 パリ五輪前のインタビューで、髙橋 藍は野心的に語っていた。 「今までにいなかった〝オンリーワン〟の選手になれるように。バレーボールを知らない人、子供たちにも魅力を伝えていきたい。 この競技を通していろいろと挑戦していきたいですし、その経験を経て、今までいなかった選手になるべきだと感じています。バレーボールだけでなく、歴史に残るスポーツ選手になりたい。それがバレーボールにもつながると思うので」 彼のような人材の登場が、男子バレーの希望といえる。 「自分自身、『今の代表チームは強い』とシンプルに感じますね。石川選手とか、海外で活躍する選手も増えて。世界を相手に気後れせずに戦えるのが、今の代表です」 髙橋はそう語っていた。ひとつの競技が時代の扉を開けるとき、「人材は束になって出る」といわれる。まさに男子バレーは多士済々、人気だけではない。 〝パリの涙〟 その悔しさと苦さは、新時代突入の予兆となるか。次のロサンゼルス五輪まで、人気爆発の条件はそろっている。間もなく、SVリーグの幕開けだ。 取材・文/小宮良之 写真/共同通信社 アフロ