「uka(ウカ)」のヘアケアラインが一新 楊枝でお馴染みの植物「クロモジ」に注力する理由
山肌も整えるクロモジの「リジェネラティブ」力
ー持続可能な「サステナビリティ」の次のアクションとして、再生を意味する「リジェネラティブ」が世界的にも進んでいますが、クロモジは環境にどのように寄与するのでしょうか? 元々、僕は趣味でサーフィンをしていたことから、海の環境保全に興味を持つようになりました。そんななかで知り合ったのが、元プロサーファーであり、海洋学者であり、さらに静岡県・下田でクロモジの栽培も行っている佐藤延男先生でした。佐藤先生とお話をするなかで、衝撃的だったのが「海の砂漠化」という現状でした。
ー海の砂漠化とはどういうことでしょうか? 日本は高度成長期の建築ラッシュで、杉や檜の植林事業を進めてきました。ところが需要の低迷により、その多くが放置され、間伐が行き届かなくなりました。 間伐が行われなくなったことで、木々が密集し、地面に光が届かない「暗黒の森」が日本中に生まれています。陽の光が届きませんから、草花は育たないし、腐葉土も生まれません。
結果、土がミネラル不足になって、貧弱になってしまった。こういった土地は大雨や鉄砲水で土砂崩れを起こしやすく、その土砂は川や海に流れ込み、砂浜を塞いでしまう。つまり陸だけでなく、海の生態系をも変えてしまっているのです。
そこで佐藤先生はご自身で山に入り、間伐を進めてきました。その活動の中で、森に光が差すようになると、クロモジが自生することがわかったというんです。クロモジには木々の成長を助ける効果もあるそうで、クロモジが育っているということは適切な自然環境になっている証しでもあります。
ー今回、伊豆のクロモジにこだわったのはなぜでしょう。 佐藤先生と一緒にこのプロジェクトを進めているというのはもちろんあるのですが、クロモジは生育環境によって、成分が変わるのも理由です。 日差しが降り注ぐ伊豆のクロモジはリナロールを多く含んでいて、香りもすごく華やかであることがわかりました。 実は、元々下田はクロモジの名産地で、明治時代には7つの蒸留所があって、和香水としてヨーロッパに輸出をしていたという文献も残っているほど、良質のクロモジが育つ環境なんです。ただ、伊豆には50万ヘクタールほど山があるらしいのですが、佐藤先生が手掛けているのはまだ10ヘクタールほど。間伐の面積をどのように増やしていくかというのは、今後の課題ですね。 ー課題のために行っていることはありますか? 先ほど自生をすると言いましたが、クロモジの精油は大量の枝葉からわずかしか摂れないため、世界的にはとても希少で商品価値が高いんですね。 そこでukaは佐藤先生たちと一緒に蒸留の会社を立ち上げ、山林間伐に取り組んでいる方々が採取するクロモジを買い上げる仕組みを作りました。 山林間伐を行っている方には、国から補助金が出るのですが、そこにクロモジのインセンティブが入ることで、間伐に関わる人が増え、地元の雇用創生につながると考えています。また、山を持っているけれど、手付かずのまま放置していて、間伐をしてほしいという方が全国にいらっしゃいますから、伊豆だけでなく、他の地域の環境回復にもなるのではと思っています。