脳科学者・中野信子 なぜ京都人は「本音」を隠して「人間関係」を重視できるのか?本音で傷つけ合うのが最善のコミュニケーションとは限らない
現代のインターネット社会では、「本音を言うのが正義」、「論破するのが最上」といった雰囲気が形成されてきましたが、場合によっては相手との関係性が壊れてしまいますよね。脳科学者の中野信子先生は、言いたいことを言うけれども、相手を直接傷つけたり、関係性を破壊してしまったりしないコミュニケーション方法を提案しています。その中野先生「長い人生、本音だって変わっていく」と言いますが――。 【写真】「本音そのものでさえ、変化していくこともある」と話す中野さん * * * * * * * ◆相手をやり込めても、逆恨みされるかも 今回、「エレガントな毒の吐き方」について考えるに当たって、インターネットでアンケートをとりました。 「難しいシチュエーションなのに、こんな風にやり取りしていてすごいな」と思ったこと、逆に「これはちょっと」と思ったことなどを総計250人の方に回答していただきました。 ご協力くださった皆様、ありがとうございました。ただその回答を見ていて、気になったことがありました。 「難しいシチュエーションで、スカッと相手をやり込めた」という例を挙げた回答がそれなりの数、含まれていたのです。 スカッと相手をやり込める、というのは、相手を打ち負かしてそのあとのことを考えないということでもあります。 もう二度と会わない人が相手であればいいかもしれませんが、それにしても逆恨みされて、何らかのリスクを負うということになりかねません。
◆言わなくていい本音はいっぱいある これは自分自身の反省点でもありますが、私の家はずっと江戸、東京と続いてきているので、あまり婉曲に言うコミュニケーションをとる人が親族には少なく、やんわりと毒を使うというロールモデルが周りにおらず、こうした学習が十分にできてこなかったという後悔があります。 そのようなこともあって、これらを学びたいという気持ちが強く、上手に言える人を見るたびに、「ああ、すごいな」と尊敬の念を持ってきました。 この「ああ、すごいな」の気持ちは、京都の人たちのコミュニケーションを見るたびに、特に強く感じたものでもありました。 ああ、もし、私がこの人たちともっと小さいときに会っていて、よくやり取りをしていたなら、もっと私も上手に毒を使えるようになっただろうか、としばしば思ってきたのです。 言わなくてもいい本音、というのは、時には、言ってはいけないことでもあります。本当のことではあっても、言ってはいけないことがある。 どちらを優先するのか。本当のことを優先すると、しばしばそれは社会性に欠けた言動であると見なされることがあるのです。 それを、東京の人は、ずいぶん大人になってから知るということも生じるわけです。
【関連記事】
- 脳科学者・中野信子「300年間お隣さん」の京都ならではのエレガントな毒の吐き方に憧れて。「論破」は気持ちよくとも損することも多い
- 脳科学者・中野信子 なぜ京都人は「本音」を隠して「人間関係」を重視できるのか?本音で傷つけ合うのが最善のコミュニケーションとは限らない
- 脳科学者・西剛志 目を閉じて何秒間「片足立ち」できたかで「脳の老化」が診断できる!? 片足立ちの練習がもたらす想像以上の健康効果とは
- 和田秀樹 定年後、急に老けるのはそれまでの「人間関係」が失われるから。ツールが豊富な今「親密な友人」「勝負できる土俵」は40代から準備せよ
- 和田秀樹「自己愛」が満たされれば怒りっぽさは自然と影を潜める。PTAやマンション管理組合。大切なのは会社以外で必要とされる場所を見つけておくこと