イチゴ観光農園にぎわい戻る 全国から2年ぶり受け入れ
栃木県鹿沼市にある観光農園「出会いの森いちご園」が3月下旬、2年ぶりに全国から観光客の受け入れを再開した。人の流れや摘み取ったイチゴを食べる場所などを大幅に見直し、新型コロナウイルスの感染防止と観光営業の両立を図った。“新しい日常”は、来園者を安心させコロナ前のにぎわいを取り戻しつつある。(栗田慎一) 【画像】「出会いの森いちご園」の見取り図
テラス席「安心」 摘みたて頬張る
「最初は戸惑ったけれど不便もなく、逆に心配せず楽しめます」。桜流しの雨天となった4日、親子6人で訪れた横浜市磯子区の森繁憲さん(50)が笑顔で言った。摘みたてのイチゴを入れた箱を手にビニールハウスから出てくると、ハウス用資材で造られた屋根付きテラスに並ぶテーブル席に座り、両親や妻、子どもたちと真っ赤な実を頬張った。 栃木県上三川町の田上亜美さん(30)もテラス席で三男・周生君(2)が食べるのを手伝いながら「子どもはその場(ハウス内)で食べたそうだけど、この方が落ち着いて食べられます」と喜んだ。 同園は2020年4月の最初の緊急事態宣言後、営業を打ち切った。宣言解除後を期待したが、繰り返される感染者の増減に「これまで非日常だったものが日常になる」と覚悟した。全国有数のイチゴ産地、鹿沼市とJAかみつがが共同出資する「農業生産法人かぬま」が運営する同園の方針は、休業を強いられた地域の観光農園の動向にも影響する。そこで感染防止と観光を両立させるため試行錯誤に乗り出した。
へた取り器も…随所に感染対策
車に乗ったまま買ってもらうドライブスルーを始めたが、イチゴを摘み取る本来の楽しみは味わえない。しかし、ハウス内で食べてもらう従来型では滞在時間が長くなり密集につながる。そこでハウス内は摘み取るだけにし、ハウスの外にテラス席を新設して食べてもらうことにした。 摘み取り後の爪先の衛生面を考え、へた取り器を常備。ごみは、職員の安全面から、客がビニール袋に入れて指定場所に捨ててもらうことにした。ハウスとテラスを行き来するため制限時間を30分から45分に延ばし、直売所を兼ねた「都市と農村の交流館」も新設した。 導入した21年2月から1年間は感染状況から来園者を県内や市内に限定し、改良を続けた。まん延防止等重点措置が全面解除された3月下旬、運営ノウハウも固まったことから来園規制を撤廃した。 今後の状況次第で再規制の可能性はあるが、同園の小久保有也さん(45)は「ハウス内の滞在時間が短くなり、入場制限の必要もなくなった。外で食べるため冬はストーブをたいても寒いですが、来園者の評判は上々です」と胸を張った。
日本農業新聞