最高のがん治療とは?「トンデモ治療」の見分け方は? がんに関する疑問を専門家に聞きました
がん治療に関して、数多くの科学的根拠に基づかない治療法が溢れている。誰もが保険を使って受けることのできる「標準治療」こそ最高のがん治療と、がん治療の専門家で日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師は語る。勝俣医師にがんに関する様々な誤解、標準治療について、そして「トンデモ治療」の見分け方を聞いた。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】
検診に向くがん / 向かないがんとは
ーー検診に向くがん、向かないがんがあるというのは本当ですか? がんに関する様々な誤解が世の中には存在します。そのひとつが検診に関する誤解です。 全てのがんに関して早期発見、早期治療が有効であると誤解されている方もいます。 「早期発見、早期治療」という言葉だけを見ればとても良いことのように思われるかもしれません。 メディア受けするし、イメージは良い。ですが、そもそもすべてのがんを早期発見、早期治療することが有効というわけではないんです。 検診に向いているがんと、検診に向かないがんがあるということなんです。
ーー検診が向いているがん、向かないがんは、それぞれどのようながんなのでしょうか? 米国国立がん研究所が出しているデータをもとにご紹介します。 がんという病気は進行するスピードによって分類可能です。急速がん、のんびりがん、超のんびりがん / 進行しないがんがあります。 急速がんというのは数ヶ月で進行するものです。「悪性リンパ腫」も含む血液のがんの多くはこの急速がんに分類されます。 一部、「悪性リンパ腫」でも進行のスピードがゆっくりしているものもありますが、多くは急速に進行するため、毎年人間ドッグを受けていたのにがんがわからないということが起こります。 人間ドッグ、PET検診、CTなどをやっていても見つからないことがあります。 また、一部の固形がんもこの急速がんに分類されます。 たとえば、乳がんは検診が有効であると言われますが、毎年検診を受けていて、つい半年前にも検査したのに何で見つからなかったんでしょうか?と聞かれることがあります。 検診の精度の問題で、見落としということも確かにあるのですが、中には見落とされたのではなく、明らかに、半年前の検診で見つからず、数か月の間に進行してしまったというスピードが早いがんが存在します。 のんびりがんと分類されるがんは検診が有効ながんです。放っておくと、将来死んでしまうリスクが高いとされています。 胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん。これらの検診は死亡率減少効果が認められており、検診が有効であるとされているものです。 そして超のんびりがん、進行しないがんは放っておいても死なないがんです。代表的なものとしては前立腺がんと甲状腺がんが知られています。 検診が有効とされている胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの中にも、超のんびりがん、進行しないがんが存在することがわかっています。 このように一言でがんと言っても様々な種類がありますが、現在の医療ではがんと分かれば、基本的には治療が行われます。 同じがんでも、急速がん、のんびりがん、超のんびりがん、進行しないがんがあり、そして将来進行するか、どの程度のスピードで進行するのか今の医学では見分けがつかないからです。 超のんびりがんや、進行しないがんを見つけてしまい、治療をしてしまうことを、過剰診断、過剰治療と呼びます。本当は、見つけなくてもよいがんを見つけてしまい、治療をしてしまうということです。