「仕事ができる人」がやっている根回しの「3つの実践法」とは?
読者の中には、重要な提案や売り込みをする時に「根回し(ネマワシ)」をしている方も多いでしょう。なぜネマワシをすると、仕事がうまく回るのでしょうか?ネマワシの効果を最大化するために、どんなことをするとよいのでしょうか?ジャスティン森氏の新刊『仕事は「数式」で考える』(青春出版社刊)から、仕事ができる人の頭の中にある「ネマワシ効果の数式」について、抜粋して紹介します。 ● ネマワシはグローバルで使えるビジネスツール? あるグローバル企業のコンサルティングプロジェクトに、私が副リーダーとしてチームに入っていた時の話です。 そのプロジェクトは北米、日本、欧州それぞれにチームがあり、連携しながら進めていました。 役割分担として、マネージャーであるスティーブ(北米チーム担当、コンサルタント歴4年)がプロジェクトの進捗管理を担当。副リーダーである私(日本チーム担当、コンサルタント歴8年)がクライアントとのコミュニケーションを担当。統括リーダーであるセリーナ(欧州チーム担当、コンサルタント歴15年のベテラン)がプロジェクト全体の監督・品質管理をする、という体制でした。 スティーブが作ったスケジュール案に対して、セリーナが強い懸念を示しました。スティーブの案では、8週間あるプロジェクト期間のうち最初の7週間で情報収集と分析を行ったうえでクライアント企業の全社改革案を設計し、最後の1週間でトップマネージメントの承認を得る、というものでした。 セリーナ:「情報収集・分析・改革案の設計に並行して、承認後にスムーズに実行されるような準備をしたいんだけど…。森さん、こういう場合、どうしたらいいかな?日本企業でよくやる手が有効だと思うんだけど」
森:「日本企業でよくやる手、ですか?何でしょう…。もしかしたら、ネマワシ、ですかね?」 セリーナ:「Yes! NE-MA-WA-SHI! それそれ、それです」 スティーブ:「ネマワシ、って何ですか?」 セリーナ:「もともとは、地面で育ててる樹木を移植する時に広大な範囲に広がった根っこを掘り返す作業を軽減するために、あらかじめ太い根っこを定期的に切っておくこと、だったみたい。切られた根っこからは細い根が生えて、根の範囲が狭くなって、樹木を販売したりして移植する時に掘り返す作業が楽にスムーズになる、ってこと」 セリーナは日本通です。ネマワシの語源は私も知りませんでした。 樹木の根っこを事前に管理して、トラブルやリスクを最小化することがビジネスでも重要で、ネマワシと呼ばれるようになったそうです。英語だと、behind-the-scenegroundwork、とも言われます。 ● ネマワシで複雑なグローバルプロジェクトを成功させよう! セリーナ:「ネマワシをして、プロジェクトの成功確率を上げるべきだと思うの」 スティーブ:「どうしてそんなまどろっこしいことが必要なんですか?マネージメント会議で上申して、議論して、必要だったらその場で修正して承認すれば、数時間で決まるじゃないですか。ネマワシしてたら、チームの時間が足りません」 スティーブが言うことも理解できます。キーパーソンが北米、日本、欧州で3人ずついるとして合計9人。その人たちに情報共有して、さらに改革案の議論に参加してもらって、反対意見が出たら案を修正して、なんてやっていたら、時間もかかりますし、まとめるのも大変です。 セリーナ:「だから私の提案は、ネマワシに必要な時間とチームリソースをスケジュールに入れておく、たとえ情報収集・分析・改革案設計の時間を減らしても、というものです」 セリーナは私とスティーブに対し、ネマワシが組織変革を成功させるうえでいかに重要か、丁寧に説明してくれました。 スティーブ:「ネマワシの効果はわかりました。ではどうして、ネマワシしたほうがうまくいくのでしょうか?」