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『香水』ヒットの瑛人 ドルチェ&ガッバーナ除き実話

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NIKKEI STYLE

インディーズのシンガーソングライター瑛人(えいと)の『香水』が大ヒット中だ。2019年4月に配信でリリースし、約1年たった今年4月頃からコロナの影響によるステイホームが後押しとなり、TikTokなどに「歌ってみた」動画を上げる人たちが急増。人気が一気に拡大し、5月25日付けのビルボード総合チャートで1位となった。 アコースティックギターで奏でるシンプルなアレンジと、ストレートに感情をぶつけた歌はどのようにして生まれたのか。まずは、22歳の彼がミュージシャンを目指した理由から聞いた。 「高校卒業後、何をしたらいいのか分からなくなったんです。それで1年間フリーターしながら考えたんですよね。自分の人生がもし本になるとしたら、“盛り上がりゾーン”が欲しいなって。そんなある日、友人のダンサーたちが、ダンスで自らを表現する姿を見て鳥肌が立ったんです。その瞬間、俺も何かを表現するアーティストになりたいなと。昔から清水翔太さんや平井大さんのようなシンガーソングライターに憧れがあったので、それなら歌だと思ったんです。 でも楽器に触ったことないし、どうしようかと悩んでる時期に、『ルンヒャンゼミ』という、シンガーソングライターを目指す人たちが集まる音楽塾を知って。そこから、毎週シンガーソングライターのルンヒャンさんに、楽曲制作の手ほどきを受ける生活が始まりました。1から作詞作曲を教わるなかで、『こんなにすぐ曲になるんだ!』っていう手応えを感じながら曲作りを続けてきました。今でもルンヒャンさんには、個人的に面倒を見てもらっています」

■TuneCoreを活用

楽曲制作を始めて2年がたった昨年4月に転機が訪れる。近年、インディーズアーティストなどがストリーミングで曲を聴いてもらう際に活用する、音楽ディストリビューションサービスのTuneCore(※)を使って、『香水』を配信したのだ。ここからシンデレラストーリーが始まっていく。 (※)日本最大級の音楽ディストリビューションサービス。誰でも登録すれば自分の楽曲を、SpotifyやiTunesといった、様々なストリーミングサービスや音楽ストアから配信できるようになる。 「有名になりたいという気持ちはあったんですけど、レコード会社にCDを送ったり、オーディションを受けたりはしてませんでした。今の俺にはまだ早いかなって。そしたらルンヒャンさんにTuneCoreを勧められて、『香水』を初めて登録してみたんです。 最初は特に何の反応もありませんでした。ただ昨年の下半期ぐらいから、TikTokにいろんな人が『香水』の『歌ってみた』動画を上げるようになってきて。みんな本当に上手だなと思って見てたら、LINE MUSICのチャートにもランクインして、『やば! はやっているのかも』と思い始めました(笑)。 それで自粛期間に入った4月頃からは、その数がさらに増えていき、FANTASTICSの中島(颯太)さんといったアーティストの方も上げて下さって、とんでもないことになっているなと。お母ちゃんも大はしゃぎして喜んでくれました」 『香水』が“一度聴いたら忘れられない”曲と言われる理由の1つが、サビの強烈なパンチラインの存在だ。久々に再会した昔の恋人との思い出が、香水の匂いによって鮮烈によみがえる情景を、「君のドルチェ&ガッバーナの/その香水のせいだよ」と歌っている。 「やっぱりサビの“ドルチェ&ガッバーナ”というワードに、まずは食いついてもらえてるのかなと思いますね。実は歌詞では、その部分以外がほぼ実話なんです。当時付き合ってた子が香水をつけていたんですけど、どこのブランドかは知らなくて。でもやっぱり匂いって、当時の思い出と一緒にずっと覚えてるんですよね。 『香水』の曲作りのセッションを行った日があるんですけど、今もバイトしてるハンバーガー屋のオーナーが普段つけているドルガバの香水を、なぜか俺がつけていたんです(笑)。話すと長くなるんですが、セッションの前日に失恋して落ち込んでる俺を励まそうと、オーナーが朝まで飲みにつき合ってくれて。その途中でオーナーに、『ちょっと香水を持ってて』と言われたまま解散。それで翌日のセッションに、前から少し憧れてたそのドルガバの香水をつけていったんです。 普段、頭の中にはドルガバなんて単語はないんですけど、歌ってるうちに、『♪ドールチェアーンドガッバーナ~』って出てきて(笑)。これだ!と思って、そのまま採用しました」 『香水』は、自らの情けないところをさらけ出した歌詞も特徴的だ。「でも見てよ今の僕を/クズになった僕を/人を傷つけてもまた泣かせても/何も感じ取れなくてさ」と赤裸々に告白する。 「当時の彼女がめちゃくちゃ優しかったところに甘えすぎて、傷つける言葉を何回も言ってしまってたんです。でも、その時はひどいことをしている自覚もなくて……。だからそれらの思いを隠さずに歌詞にしました。ルンヒャンさんにも『自分のコンプレックスをそのまま歌詞にできるのは素敵だね』と言ってもらって。そこは、自分の強みなのかなと思っています」 現在は、森山直太朗らが在籍する事務所に所属。今後の活動についてはどう考えているのだろうか。 「インディーズでもここまでできたという気持ちはあるんですけど、メジャーアーティストになればもっと多くの人に届くんだろうなって考えたりもしますね。 あと少し前までは、サーフミュージックやヒップホップなど、いろいろ挑戦したい曲のことしか考えられなかったんです。でも今は、大きな会場でライブするイメージを持てるようになってきてて、すごくワクワクしています」 (ライター 小松香里) [日経エンタテインメント! 2020年8月号の記事を再構成]

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