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ドラ1確実右腕 福岡大大濠・山下舜平大のストレートは“鉄球”の衝撃【安倍昌彦 特別寄稿】

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日刊ゲンダイDIGITAL

 福岡大大濠高・山下舜平大(18)には、3回も驚かされている。  最初は、彼が2年生の春、福岡県大会の試合前だ。外野でキャッチボールを始めた選手たちをネット裏から眺めていたら、間違いなく一人だけ、勢いの違うボールを投げているでっかいユニホーム姿。  すぐに見に行ったら、189センチの長身の右腕が長い手足をしならせながら、ものすごいボールを投げている。指先を抜けたボールが伸びっぱなしに伸びて、そのままスタンドに突き刺さった時には、なんだこりゃ……と言葉も出なかった。 ■真っ直ぐ伸びる100メートル遠投  高校ジャパン(U18)の候補合宿で、大船渡高・佐々木朗希の「160キロ」を見たばかりだった。「佐々木朗希」がまた現れた……。  すぐに、旧知の野球部関係者に連絡して、「すごいのがいますねぇ」とほめちぎったら、「いやあ、メンタル面も含めてまだまだ」と軽くいなされてしまったが、私の記憶の中には「福岡大大濠・山下舜平大」……下の「しゅんぺいた」が読めなかったのだが、その未完の大器の存在はしっかり刻み付けられたのだった。   そして、コロナによるブランクを挟んで、この夏の「プロ志望高校生合同練習会」だ。  福岡県の独自大会でその剛腕を披露し、スカウトたちに「1位でなきゃ取れない」と言わせた直後だったから、どうしてわざわざ……と思ったが、聞いてみたら、「アピールできる機会があれば、参加するのが当然」と、当たり前の顔をされてしまった。  甲子園球場で2日間行われた「合同練習会」。初日は投手の出番がほとんどなかった中で、ふいにグラウンドに出てきて、外野の芝生でやり始めた「遠投」に驚いた。  きちんと投球フォームをつくって、キャッチボールから始め、その距離をどんどん広げていく。  30メートル、50メートル……やはりきちんと投球フォームをつくり、まっすぐに白い糸を張ったようなボールが、60メートル、70メートルを超えて、パートナーの選手がバックスクリーンの前に達しても、レフト線の位置から反動も使わず、助走の助けも借りずに、投球フォームのまま、たいした力感もなく投げるボールがほぼまっすぐに100メートル近く伸びていったから驚いた。 ■左手の人さし指が変形  こんな遠投のできる投手、ほかに誰がいたろうか。  何年も、何年も、記憶をさかのぼって、ようやく「横浜高・松坂大輔」にたどり着く。  しかし……と考えた。山下舜平大は10センチほど松坂より背が高い。長身、大型の選手ほど、ボディーバランスを保ちながら遠くまで投げる動作は難しい。その「巨体」の山下舜平大が、フォームの崩れなどまるでなく、きれいにタテに腕を振って、ライナー軌道のボールを繰り返し投げているのだから、ポイントが高いのは山下のほうではないか。  翌日、こちらのほうが<本番>のシートバッティングで、打者5人を相手にすべて140キロ後半の速球とカーブだけで、1安打3奪三振。150キロも披露してみせたピッチングが、むしろ「蛇足」に思えたほどだった。 「そんな遠投をやっても、まだ投げ足りなかったらしいですよ、しゅんぺいたとしては……」  愛弟子の様子を聞いて、福岡大大濠高の八木啓伸監督があきれたように笑っている。 「とにかく、しゅんぺいたには<余力>がありますから……。そこが末恐ろしい」  9月、山下舜平大の全力投球を、福岡大大濠グラウンドのブルペンで受けた。  この時がいちばん驚いた。そりゃあ、とんでもないボールだった。  ブルペンで受けて話を聞いて記事を書く……。このスタイルの取材を始めて20年。およそ240人に及ぶ快腕、剛腕の中で、ナンバーワンなのではないか。  東海大・菅野智之、花巻東・大谷翔平……球史に残る大選手が何人もいる中で、これほど破壊力のあるボールをこちらのミットに投げつけてきた投手がいただろうか。  遠い記憶だから、印象が薄れているわけじゃない。ミットの中の左手の記憶は永遠に「等身大」だ。うなる剛球……なんてもんじゃない。左手の人さし指なんか、いちばん上の関節が今も前に曲がったままだ。  150キロ近い剛速球が、ブルブル震えながらこっちに向かってくる。  ミットにめり込んでくる衝撃は「鉄球」だ。  速い、強い、重い、おまけに、猛烈なバックスピンだったり、手元でグイッと動いたり。 ■地面に突き刺さるカーブ  ブルペンのマウンドに立つ姿がデカい。  マウンドで大きく立てるのは才能だ。全身の筋肉発達と姿勢がすばらしい証拠だ。姿勢がいいのは、体幹の強さと生きている自分に対する自信の表れ。  カーブしか投げないというが、こんなカーブなら、高校生相手にカーブだけでたくさんだろう。  本人、「カーブ」だと言ったが、打者によっては、タテの猛烈スライダーだと思ったり、高速フォークに見えたり、それぐらい地面に突き刺さるようなパワーカーブだ。  速球だって、とんでもなく速いが、初めて受ける者には、カーブのほうがもっと速い。最初のカーブなど、ミットにかすりもせずに後ろのネットに跳ねた。  チェンジアップも、スプリットも、将来のためにちゃんと練習しているという。大切なことだ。  しかし、どうだろう。 「飛び道具」を覚える前に、この未完の大器、笑いながら「160キロ」を投げてしまうのではないか。それは、165キロ、170キロの未体験ゾーンに臨む「余力」なのだ。  世界中にはきっとすごいヤツが隠れているのだろうが、「人類最速」にエントリーできる可能性を秘めた人材がこの国にも現れた……。そこまでは言い切ってもよいのではないか。私は今、そう思っている。 ▼山下舜平大(やました・しゅんぺいた)2002年7月16日、福岡県生まれ。189センチ、93キロ。右投げ右打ち。2019年春季九州大会ベスト8。 (安倍昌彦/スポーツライター)

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