ロックバンドがメジャーになるための苦闘、X JAPAN、GLAYのデビュー・アルバムを振り返る
エクスタシーを次の世代のバンドの登竜門、そして彼らを育てる場所にした功績
X / X JAPAN 1989年4月発売、X JAPAN、当時Xのメジャー・デビュー・アルバム『BLUE BLOOD』から「X」。ファンが両手でXを作る、みんなでジャンプするあの曲ですね。Xは幼稚園、小学校と同級生だったYOSHIKIさんとTOSHIさんが中学のときに組んだバンドですね。初めてのライブが中学の文化祭だった。先週のBUMP OF CHICKENみたいですけどね。同じ千葉県の館山、高校のときにXという名前にした。1984年に上京して1985年にインディーズでシングル・デビューしているんですけど、そのときすぐに翌年にエクスタシーレコードを作っているんです。自分たちの活動のためにレーベルを作った。このへんが非凡なところですね。 ライブハウスで火を吹いたり、シンバルを燃やしたり、過激さで知られているエピソードがいろいろありました。当時、ヘヴィメタというのはジャンルとして市民権を得ていなかったですから。そういう自分たちの音楽がメジャーになるために何をするのかというのを、彼らはいろいろなところで試みていました。僕が知っているのは当時はそうだったからしょうがないんですけど、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」というテレビ番組がありまして、その中に早朝ヘヴィメタというコーナーがあったんです。寝てるタレントをヘヴィメタのバンドが爆音で起こす、もう笑いのコーナーですよ。そこに出ていて、こいつらなんだというふうに思ったのが最初でしたね。ですから、YOSHIKIさんがクラシックをちゃんと勉強していたとか、そういう音楽のことはまったく話題にもされないであの革ジャンで鋲を全身につけて髪の毛を立てているあの格好と音がでけえなという、それだけが世の中にまず流れていったという、そういう始まりでしたね。ヴィジュアル系って言葉もなかったわけで、ヘヴィメタの代名詞が彼らでした。ヘヴィメタがああいうものだと思われたということで、ヘヴィメタをやっている人たちから総スカンだった時期があったそうですね。メジャー・デビュー後、初めてシングルになった曲をお聴きいただきます。「紅」。 紅 / X JAPAN あのイントロの美しいメロディが一変してこの激しいシャウトとドラムのビートに突っ込んでいく、この2面性ですね。X JAPANならでは。初めて見たのが1989年11月の渋谷公会堂だったんですけども、やっぱり衝撃でした。何が衝撃だったかと言うと、あの2バスですね。命がけの2バス。ドラムを叩いて歌う人はそれまでもいましたけども、そういう常識を超えていましたからね。そのときもYOSHIKIさん、ステージで倒れたんじゃなかったかな。その時に撮影用のクレーンが渋公の廊下の天井を突き破って水が溢れてきて、渋公が水浸しになった記憶がありますね。この人たちのライブは何か起こるなというようなことが、当時からイメージづけられました。 X JAPAN、そしてYOSHIKIさんの功績はいろいろあるんですけど、このエクスタシーを次の世代のバンドの登竜門、そして彼らを育てる場所にしたことでしょうね。1991年の10月29日、これは手帳に書いてあったんですけど、武道館でエクスタシーサミットというライブがあったんです。LUNA SEAとかレディース・ルームとか東京ヤンキースとかいくつかのバンドが出た中ではやっぱりX JAPANの音楽的な飛び抜け方を感じましたね。当時のLUNA SEAもヴィジュアル系でしたけど、X JAPANはそれだけじゃなかったんですね。クラシック的な様式があったというのが、明らかに違った印象でした。 当時のエクスタシーレコード、エクスタシーレーベルはある種のイメージがありまして。『灰とダイヤモンドAnthology』で、GLAYを見つけたエクスタシーレコードの谷口さんが話しているんですけど、当時TAKUROさんは「エクスタシーは入るときにYOSHIKIさんに100発殴られないと入れない」と思っていたらしくてと言っていました。でも初対面のときにTAKUROさんはYOSHIKIさんに「ピアノを弾いてくれますか?」と言ったらしいんです。そのTAKUROさんの思い切りのよさときちんとした姿勢、それがやっぱり他の人と違ってましたねと言っていました。そういう最初の出会いは大事ですね。X JAPANはまだヴィジュアル系という言葉がなかった時代ですが、この『BLUE BLOOD』のコピーにヴィジュアル・ショックという言葉が使われていた。HIDEさんが作ったヴィジュアルそこからヴィジュアル系が生まれて「SHOCKS」というヴィジュアル系の雑誌も誕生しました。GLAYもよく出ていましたよ。YOSHIKIさんの作曲家としての才能が遺憾なく発揮された曲をお聴きいただきます。 ENDLESS RAIN / X JAPAN 今年が35周年、X JAPAN、当時Xのメジャー・デビュー・アルバム『BLUE BLOOD』から「ENDLESS RAIN」。客席との大合唱が思い浮かびますね。ロック・バンドでありながら、これだけ美しいバラードが書ける。なぜYOSHIKIさんが世界で評価されているかということの1つの証でしょうね。メジャー・デビューしなかったら、こういうバラードは生まれてなかったのかもしれませんね。インディーズの頃の彼には世界を変えようとか、世界を壊したいということが先走ってたのかもしれません。メジャー・デビュー以降は音楽的なことをきちんとやりたいという両面があった。あれだけ破壊的なエネルギーと美しいメロディを持ったアーティスト、他に思い浮かぶでしょうか。