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奈良原一高が逝去。「人間の土地」や「王国」で大きな足跡残す

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美術手帖

 日本を代表する写真家のひとり、奈良原一高が1月19日、心不全のため逝去した。享年88。  奈良原は1931年福岡県生まれ。学生時代に池田満寿夫、靉嘔(あいおう)らと活動し、59年に川田喜久治、東松照明、細江英公らとともに写真のセルフ・エージェンシー「VIVO」を設立した。  1956年には、鹿児島の桜島噴火で埋没した黒神村を写した《火の山の麓》と、長崎の人工の炭鉱島・端島(軍艦島)を撮影した《緑なき島》の2部作からなるシリーズ「人間の土地」でデビュー。  58年には、《壁の中》《沈黙の園》の2部作形式で制作された「王国」シリーズを制作。和歌山県の婦人刑務所と北海道のトラピスト修道院を撮影地に選び、閉ざされた壁のなかでの生活を追うことで、現代に生きる不安とむなしさを見つめた。  その後62~65年にはヨーロッパに滞在し、67年に写真集『ヨーロッパ・静止した時間』(鹿島出版社)を刊行。この写真集で日本写真批評家協会賞作家賞、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞を受賞するなど、高い評価を得た。  近年では、2004年5月に回顧展「奈良原一高 時空の鏡 ―シンクロニシティ」を東京都写真美術館で開催し、同月に「無国籍地」シリーズをまとめた写真集『無国籍地  Stateless Land―1954』(クレオ)として刊行。05年より長期療養に入っていた。  そしていま、この奈良原の作品を見られる展覧会が都内で3つ同時に開催されている。  世田谷美術館では「奈良原一高のスペイン―約束の旅」 (~1月26日)が開催中。本展では、スペインの闘牛場に通う濃密な日々をまとめた写真集、『ヨーロッパ・静止した時間』(1967)と『スペイン 偉大なる午後』(1969)に焦点を当て、『ヨーロッパ・静止した時間』から15点、 『スペイン 偉大なる午後』から120点の、計135点のモ ノクローム作品を展覧している。  JCIIフォトサロンの奈良原一高「人間の土地/王国 Domains」展 (~2月2日)では、上述の「人間の土地」と「王国」というふたつのシリーズから、モノクロ作品68点を見ることができる。  加えて東京国立近代美術館では、常設展「MOMATコレクション」(~2月2日)において、奈良原一高の最初期作品「無国籍地」を展示。軍需工場の廃墟を写した内省的な作品群が展示されている。