オンラインクレーンゲーム「トレバ」、景品獲得されそうになると“スタッフが裏操作”していたと発覚 被害者と運営会社を取材
「景品が獲られそうになるとスタッフがプレイ中の台の設定を裏で操作」――。大手オンラインクレーンゲーム「トレバ」に持ち上がった疑惑について、ねとらぼ編集部が取材したところ、同サービスを運営する「サイバーステップ」が不正の事実を認めました。「トレバ」で今何が起きているのか、詳しくお伝えします。 【画像で見る:“絶対に獲れない設定”にするトレバスタッフ】
「トレバ」とは
ポイントを購入することにより、実在するクレーンゲーム機をオンライン上で遠隔操作できる、オンラインクレーンゲーム。2020年にはアプリダウンロード数1500万人を突破し、設置台数1000台以上を誇る「トレバ」は、オンラインクレーンゲーム業界最大手です。 ねとらぼ編集部が本格的に「トレバ」を調べ始めたのは2020年に入ってからのこと。人気お笑い芸人を起用したテレビCMが全国放送されたり、人気YouTuberとコラボをしたりと知名度を伸ばす一方、肝心のプレイに関しては景品にアームが届かなかったり、突っ張り棒を使った設定(通称:橋渡し)の間隔が狭すぎて景品がはまりこんで落ちないなど、さまざまな疑惑や不満の声が上がっていました。 そこで筆者は「トレバ」に対して集団訴訟を起こす準備をしているという「トレバ被害者の会」のメンバーをはじめ、複数の「トレバ」プレイヤーに接触。トレバで起こっているさまざまな問題についてお話を伺ってきました。
「トレバから現金での補償を勝ち取ったこともあります」(トレバ被害者の会)
まずお話をうかがったのはTwitterを中心に活動している「トレバ被害者の会」の皆さんです。 ――早速ですが「トレバ被害者の会」の皆さんが把握している、「トレバ」の問題点について教えてください。 被害者の会:数が多すぎるので具体的な件数は差し控えますが、大きく分けると「景品の大幅な配送遅延」と「ずさんな在庫管理」。「テストプレイが不十分な台の解放」と「不具合発生時のポイント返還拒否」。「スタッフによってGET判定があいまい」などで、一番問題視しているのは「景品が獲られぬように連続プレイ中の台をスタッフが遠隔操作で設定を変更している」という点です。 ――順番に伺えればと思うのですが、「連続プレイ中の台をスタッフが遠隔操作で設定を変更している」というのはどういうことなのでしょうか。 被害者の会:本当に考えられないような話なのですが、「トレバ」ではプレイヤーのプレイ中にスタッフが遠隔で台の設定変更を行う不正を行っていることが分かったんです。 これは筐体の中にA・Bという2種類の景品が入っている台を被害者の会のメンバーがプレイしていたときに起こったことなのですが、Aの景品を獲得した後に、連続でBの景品を獲ろうとした際、Aの景品を獲ったときと、Bの景品を獲ろうとしたときでは明らかにアームの開き幅が変わっていることに気付いたんです。 クレーンゲームというのは「持ち上げる(つかむ)」だけではなくて、「押す」「動かす(ずらす)」というのもテクニックなのですが、アームの開き幅が広くなればなるほど“押す力が弱くなる”んですね。Aの景品は「押し」で獲得していましたから、Bの景品を獲られたくないがためにスタッフが隠れて設定変更を行ったことは明らかでした。 ――たまたま機械の不具合でアーム幅が広がってしまったという可能性はありませんか。 被害者の会:不正を疑った私たちが「トレバ」運営チームに問い合わせたとき、まさに「機械の調整、メンテナンス、セッティング等により、アーム開き幅に差が出るといった個体差の発生が不可避ではありますが、ご指摘のような操作といったものではございません」という内容の返信がありました。つまり、不正は行っていないということですね。ところが実はこの不正、別の筐体をプレイしていた別のプレイヤーに対しても行われていたんです。 先ほどお話した筐体とは別の台を被害者の会のメンバーがプレイしていた際、Bの景品を獲った後に連続プレイでAの景品を獲ろうとしたところ、今度はアームの上昇の仕方が変わるということが起きたんです。連続プレイ中なのに突然アームの設定が変わることが2度も起きるなんておかしいと思いませんか? そこで再度こちらから「トレバ」運営チームに不正を疑っている旨の連絡を入れました。すると、今度は「運営チームにて改めて調査いたしましたところ、連続プレイ内においてアーム調整がされていたことを確認いたしました」という連絡が来たんですよ。これは要約すると、「トレバのスタッフが不正を行いました」と認めたということです。 ――当初は故意の操作を否定していたのに、ですよね。そのあとどうなったのでしょうか。 被害者の会:「通常、プレイ中は操作をしないように周知を徹底しておりますが、再度周知の徹底とシステム的な改善等により再発防止を行う予定です」という説明と謝罪があり、アーム調整が行われていたプレイ回数分のポイント返還が行われました。 こちらが証拠を持っている旨などを強く訴えたので最終的にポイント返還に至ることができましたが、普通の人なら1回目の返信の時点であきらめていると思いますし、プレイヤーが気付いていないだけで「トレバ」側が隠れてプレイ中の設定変更をやりまくっている可能性もあります。「トレバ」運営チームの不誠実な対応にはほとほとあきれ果てました。 ――「景品の大幅な配送遅延」と「ずさんな在庫管理」についてはいかがでしょうか。 被害者の会:「トレバ」では公式サイトに「通常、景品配送依頼から2~7日でお手元に到着しますが、 現在配送が大変混み合っており、誠に申し訳ございませんが、 発送まで4日〜21日程度のお時間をいただいております」との表記があるのですが、実際には21日をはるかに上回る配送遅延を日常的に繰り返しています。 もっともやっかいなのは季節商品の配送遅延で、被害者の会のメンバーの中には、クリスマス景品がバレンタインデーを過ぎてから届いたという経験をした人もいるのですが、季節景品はシーズンを超えるとほとんど使い道がなく、価値がなくなります。配送が遅れるのならもうその景品はいらないというプレイヤーも少なくないので、困っている人も多いはずです。 ――「トレバ」運営側には早く配送してもらうよう連絡を取ることはできないのでしょうか。 被害者の会:それはもうどのプレイヤーさんも何度もお願いしていると思いますが、だいたいは返信もなく無視ですね。例えやっと届いたと思っても中の景品が間違っていたり、「景品の在庫がなくなった」と一方的にポイント返還されたりということもザラです。中には開封済みの景品が届いたことさえありました。とにかく景品の管理やプレイヤーへの対応がずさんなんです。 被害者の会のメンバーの中には1000個近い景品が配送遅延で届かないという状態になった人もいるのですが、そのケースでは弁護士の介入を行いました。というのも当初は消費者センターへの相談を行ったのですが、消費者センターの方が「トレバ」を運営するサイバーステップ社に問合わせたところ、「『トレバ』に関しては電話窓口が存在せず、消費者センターからの連絡であってもメール問い合わせしか対応しない」ということで、「消費者センターとしてメール対応はできないので、これ以上何もできません」と言われてしまったからです。 結局「トレバ」側も弁護士が介入し、双方の弁護士がやり取りをして「あまりにも配送が遅延しているものに関しては現金での返金を行う」という取り決めになり、実際に数十万円の返還を受けることができました。 またこの一件から「トレバ」は、配送遅延が発生した時に限って「配送についてのお知らせ」というメールをプレイヤーに送付するようになり、配送遅延のお詫びとしてプレイチケット1枚を付与するというシステムができました。配送遅延がないことが一番ですが、悪いことを悪いと認めて補償する姿勢になったことは、良いことだと思います。 ――「テストプレイが不十分な台の解放」というのはどういうことなのでしょうか。 被害者の会:「トレバ」では公式サイトに、「景品の設定を行う際には、事前に獲得可能なことを確認し、サービスとして公開しています」に記載してあるのですが、本当に事前確認しているのか疑問になるような設定がかなり多いです。 例えばアームでカプセルをコロコロ転がして落とすと獲得となる設定のものがあったのですが、最終局面においてアームが届かないんですよ。つまりギリギリ落ちるところまでは運べるけれども、獲得はできないということです。このほかにも景品についているビニールの紐にアームをひっかけて獲得口まで運ぶ設定の台があったのですが、これもギリギリ落ちるかどうかのところまで行くと、最終的にアームが届かないんですよ。狙ってやっているのか、単純にちゃんとテストプレイをしていないのか分かりませんが、景品を獲得口の近くに運ぶだけで数万円掛かる台もあるので、そこから最終的に取れないというのは本当にひどいと思います。 ――「不具合発生時のポイント返還拒否」というのはどういうことなのでしょうか。 被害者の会:クレーンゲームというのはリアル店舗でもオンラインでも、台に不具合が起きることがよくあるのですが、「トレバ」はなぜかかたくなに不具合の発生を認めず、ポイント返還を行わない場合があるんです。 被害者の会のメンバーの中にもアームが下降しないという不具合に遭遇した人がいるのですが、「トレバ」運営側は「利用規約にもございます通り、機器が全て正常に動くことを保証いたしておりません」「お客様ご自身のご判断でプレイ台の状態を確認したうえで、お客様ご自身の判断でプレイを開始できます。そのため、この度のお問い合わせに対する補填対応は致しかねます」と問い合わせ内容とかみ合わない返答を行い、ポイント返還を拒否してきました。 前提としてプレイヤーは課金前にアームが正常に動くかどうかは確認することができないわけですし、「アームが動けばラッキー」「アームが動かなければアンラッキー」というようなゲームに課金しているわけではないのですし、このような対応は考えられないものだと思います。 ――「スタッフによってGET判定があいまい」というのはどういうことでしょうか。 被害者の会:被害者の会のメンバーが小さいぬいぐるみ景品を獲得しようとしたときの話なのですが、最終的に景品が筐体から落下していく際、紙製のタグが突っ張り棒に引っかかったんです。その後、それを何とか外そうとしたのですが、アーム設定の関係上どうしても届かなかったため「トレバ」運営に獲得判定の依頼を出しました。すると、それは獲得判定になったんですね。 その後、同じ景品をプレイしたらまた同じ落ち方(紙タグが引っかかった)になったので、獲得判定の依頼を出したところ、今度は獲得判定が得られませんでした。「前回は獲得になった」旨を伝えても判定は覆らずで、「景品が筐体の底部に触れたら獲得になる」と説明を受けました。ということは前回の獲得判定は誤りなのか? モヤモヤしました。 ――いろいろとお話を伺ってきましたが、皆さんが「トレバ」被害者の会を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか。 被害者の会:トラブルに遭遇した際、最初はメンバーそれぞれが個別の対応を求めるなどしていたのですが、対個人の場合、「トレバ」はほとんどきちんとした対応を取ってくれません。また「少額の被害だから」とあきらめているプレイヤーもたくさんいるという状況ですが、SNSを見てみると自分たちと同じような嫌な思いをしている人が少なくないと分かったので、これまで個々に集めてきた「補償を受けられるためのノウハウ」であったり、「不正の証拠」だったりが共有できれば、集団訴訟を起こせるのではないかと考え、現在に至ります。 ――具体的にはどのような活動を行っていますか。 被害者の会:プレイヤーさんから被害者の会へ相談があり、アドバイスしたところ、ポイントの補償を受けられたという事案が数件ありました。現状で30~40人くらいの方とお話をしていますが、中にはプレイヤーさん側の単純な技術不足だったり、ルールの勘違いだったりと、必ずしも「トレバ」に非があるものばかりではないことも分かってきました。そのため、現在は本当に「トレバ」に非がある案件についての情報を収集・精査しているところです。 ――トレバ被害者の会としてサイバーステップ社に伝えたいことはありますか。 被害者の会:ここまでお話してきたようなことは、被害者の会のメンバーだけでなく、多くの「トレバ」プレイヤーが遭遇したことのあるトラブルだと思います。サイバーステップ社にはまず、こうした問題が頻発しているということを正しく把握していただきたいです。 そして、プレイヤー側が法的措置を行うと告知したり、弁護士を介入させたりしない限り、プレイヤーに寄り添った対応を取らないという姿勢については改め、悪いことは悪いと認めて2度とそういったことを起こさないような対応策をしっかりと講じてほしいです。 トレバ被害者の会では引き続き、サイバーステップ社に対して集団訴訟を含めた対応を行いたい意思のある「トレバ」プレイヤーやアドバイスが欲しいというプレイヤーを募集しています。気軽にDMしていただければ幸いです。