日本のジェンダー問題改革は「ポスト森」から始まる
編集長コラム
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任する意向であることが11日、分かりました。女性蔑視発言の責任を取るもので、組織委が12日に開く緊急会合で表明する見通しです。国内外の世論はこれを歓迎するのでしょうが、当然ながら、森氏の辞任だけでは何の問題解決にならないのです。(オルタナ編集長・森 摂)
■「ジェンダー・ギャップ指数」121位という事実
「女性は話が長い」という一連の森氏の発言が火を付けた今回の問題は、森氏の辞任で一応の収束を見せそうです。ただし、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」(2019年)で日本は153カ国中121位である事実は、森氏の辞任前も辞任後も変わりません。 GGIには「経済」「教育」「保健」「政治」の4分野があり、「出生時の男女比」や「健康寿命の男女比」は世界1位です。教育でも、「識字率の格差」や「基礎・中等教育在学率の格差」も世界1位です。 ところが足を引っ張っているのが「経済」(幹部・管理職での男女比や、勤労所得の男女比など)と「政治」(国会議員の男女比や閣僚の男女比)です。
■執行役員や監査役は取締役ではない
日本オリンピック委員会(JOC)でも、理事25人のうち女性は5人(20%)と少ないため、これを40%以上にすることを公約に掲げました。しかし、日本企業では、取締役のうち女性が20%以上いる企業は、かなり少ないのが現状です。 そもそも、日本の「女性の役員比率」の計算では、取締役以外の監査役や、執行役員もカウントしています。しかし会社法では執行役員は従業員と位置づけており、監査役も執行役員も、議決権を有する「ボードメンバー」ではありません。海外の女性取締役比率は主にボードメンバーだけで計算されるので、そもそも日本は「ゲタ」を履いているのです。 さらに、日本企業の女性取締役の多くは、「外部の識者」である場合が多く、プロパー社員が少ないのも特徴です。これは「外部からの監視」という観点ではメリットもあるものの、日本企業では、社内から取締役に出世する人たちの大半が男性であることを考えると、そこに男女の待遇格差があるのは明らかです。 ジェンダーだけではない、国籍のダイバーシティ(多様性)についても日本は大きく遅れを取っています。アニュアルレポートなどで役員一覧に掲載されるほとんどの人が「50歳代以上の日本人男性」であることを、海外の投資家も懸念しています。