「創薬」と「育薬」で世界に影響を与える研究を-佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科
◇脱「白い巨塔」―変革続ける医局の“自画像”【5回】木村晋也先生
白血病をはじめとする血液疾患の診療や研究に取り組む血液・腫瘍内科。血液疾患の中には、現状の医療では治癒が難しいものも少なくないため、新たな治療法や薬の開発が待たれています。時代に合わせて変わる医局の姿をリポートするシリーズ第5回は、佐賀県内の血液内科専門医数の増加に貢献し、世界に影響を与える研究に取り組んできた佐賀大学医学部血液・呼吸器・腫瘍内科教授、木村晋也先生のお話です。
◇医局制度の2つの意義
医局で育った医師の1人として、医局制度の意義は主に2つあると思っています。1つ目は若手医師の指導です。医局に所属すれば、患者さんへの対応など医師としての基本について十分な指導を受けることができると思っています。 新医師臨床研修制度では、研修医はスーパーローテート制度のもとで、1~2カ月交代でさまざまな診療科の研修を受けることになります。このため、十分な指導を受けることができないケースもあるように思います。各診療科では短期間の付き合いになることもあって、たとえ嫌われても厳しく指導しようという医師は少ないのかもしれません。そのまま医局に入らなければ、基本をしっかりと身に付けないまま診療に携わることになりかねません。入局している若手医師には、先輩医師たちも「嫌われようともしっかりと鍛えなければ」という思いで、指導することが多いでしょう。 2つ目は地域医療への貢献です。もともと、地域医療は医局制度によって機能していたという背景があります。かつては、2~3年など期限を設けて医局から若手医師を地方へ派遣するケースが一般的でした。医局制度がなければ、地域医療に従事する医師は減り、結果的に地方の患者さんが受けられる医療サービスのレベルが低下してしまうことも考えられます。 このように、医局制度は若手医師の指導、そして地域医療への貢献という大きな意義があったのです。近年は入局しない医師も増えていますが、医局制度はある程度、維持すべきものであると思っています。