わが社の商品販売数、本当に好調?…最低限知っておきたい、データ分析に必須の「ビジネス指標」2つの具体的な名称【経済評論家が解説】
前年比だけ見ていては、事態の変化に気づきにくい!?
石油ショックが来て消費者物価指数が100から120になって(20%上がった)、そのまま推移したとします。物価の前年比は12カ月にわたってプラスで、その後はゼロになります。 1年後にゼロになった前年比を見て「ようやく石油ショックの影響が消えてインフレが収まった」と考えるのは誤りです。石油ショックの翌日から物価は「高値で安定」していたわけですから。 もうひとつの例として、物価が毎月1%ずつ下がっている国があるとします。あるときから急に物価が毎月1%ずつ上がり始めたとした場合、物価の前年比がプラスになるのは半年後です。前年比を見ていると、物価が上昇に転じたことに気づくのが半年遅れるわけです。 消費者物価指数は、チョコレートと異なり、季節性がそれほど大きくないので、後述の季節調整値を求めなくても、物価指数そのものをグラフに描いて眺めるだけで、なにが起きているのか概ね正しく理解することができるでしょう。同様に、季節性が大きくないものは、グラフに描いてみるのがよいと思います。
「季節調整値」の簡便な算出方法
上記のように、前年比を見ることは、便利ですがリスクもあります。そうしたリスクを避けるためには、「季節調整値」を見るとよいでしょう。「2月は普段の3倍チョコレートが売れるから、2月の売上を3で割った値をグラフに描き込もう」といった作業をするわけです。 2月のチョコレート売上が普段の何倍なのかを計算するために、プロは複雑な方法を使っているようですが、素人がパソコンで簡単に計算できる簡便法がありますので、参考にしていただければ幸いです。 まず、過去10年分のチョコレートの売上高のデータを用意します。合計120個のデータがあるので、その平均を計算します。次に、毎年2月の売上高のデータだけを取り出します。合計10個のデータがあるので、その平均を計算します。あとは、2月の平均を全部の平均で割ればよいわけです。2月の売上が普段の3倍であることがわかれば、毎年の2月の売上を3で割った値が季節調整値となります。 季節調整値は、前月と比較することが可能なので、前月比で何%増えたのか、という数字をしばしば耳にしますが、それだと「前月も好調だったから前月比ゼロだった」といったことがわかりません。 季節調整値が求まったら、ぜひグラフを描いてみましょう。チョコレートの売上高そのものをグラフにすると、毎年2月のところが高い山になって、なんだかよくわかりませんが、季節調整値ならばグラフにすれば「最近好調だ」「最近不調だったが、今月は並だった」といったことが一目でわかりますから。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義