7年目の新型レクサスISに魅力はあるのか? 驚きの“こだわり”とは
ビッグマイナーチェンジを受けたレクサス「IS」に小川フミオが試乗した。想像以上の進化とは? 【写真を見る】新型レクサスISの詳細(23枚)変更ポイントをチェック
後輪駆動セダンは絶やさない
「これはかなり魅力的なルックスになったなぁ」 さまざまな改良が施され、2020年11月5日に発売された新型レクサス「IS」。実車を最初に見たときの感想が思わず口をついて出た。 ”ワイド&ロー”が強調されたスタイルだけでない。実際の走りは「このクルマ、まだまだいけるゾ」と、嬉しくなるものだった。 ISとしては3代目にあたる現行モデルが発売されたのは、2013年。ドイツ車を向こうにまわしたような、元気のいい後輪駆動セダンで、かつ、挑戦的なデザインが、自動車好きの関心を惹きつけるモデルである。 「セダンを振り返ってもらいたい。そのために“後輪駆動セダン”の火を消さないんです」 ISに改良を施した背景について、開発を総指揮したレクサスインターナショナルの小林直樹チーフエンジニアが述べた言葉が印象的だった。 いま私たちが必要としているのは、こういう“こだわり”で作られたプロダクトではないだろうか? じっさい、あたらしいISは納得できる出来になっている。セダンが好きだというひとに、ぜひ注目してもらいたいと思うのだ。
美点はバランスの良さ
今回のマイナーチェンジでは、レクサスらしさとはなにか? を、検討したうえで、その結論にもとづいて、そこかしこに手を入れたそうだ。ひとつは乗り心地、もうひとつは快適性である。そして、アウタースキンの作りこみだ。すべてにおいて、携わった技術者が誇らしげに成果を謳っているのも印象的である。 乗ったのは、「IS300 F Sport」だ。タイヤ、ダンパー、駆動系の制御システムなどが専用になる。「レクサス車はF Sportとそれ以外とに大別される」と、車両性能開発を統括する水野陽一氏が説明してくれた。エンジンは180 kW(245 ps)の1998cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンで、8段ATを介して後輪を駆動する。 美点は、バランスのよさだ。たとえば足まわり。しっかりしている。でも、ガチガチでなく、適度にしなやか。ハンドリングを向上させるべく、たとえばカーブを曲がるときの車体の傾きなどは抑えられているいっぽう、まっすぐな道では路面の凹凸をきれいに吸収してくれるのだ。 今回のマイナーチェンジではトレッドといって左右輪の幅が拡大。コーナリングなど走りの性能が向上したという。同時に、一新されたボディパネルによって、バンッと威勢よくタイヤが張り出しているのが強調されているのだ。それもまたカッコいい。 やたら速い、というよりは、やたら気持ちがよい。「うどんでいえば、トッピングでなく、麺とつゆだけでおいしい”素うどん”」とは、開発を手がけたアシスタントチーフエンジニアの前澤伸氏の言葉だ。 もうすこし具体的には、「シームレスな動きを意識して、たとえばステアリングは切っていくときとおなじく、戻すときの制御も繊細に、ブレーキも踏んでいくときとおなじく、ペダルの踏力を抜いていくときもていねいな減速感を意識しています」(前澤氏)とのことだ。 「シームレス(つなぎ目のない)」な操作感とも表現されるISの操縦性。たしかに、あたらしいISに乗っていると”なんだかいいなぁ”とすぐに感じられる。ようするに、スムーズにすべてがつながっていると感じられるからだろう。思ったとおりにクルマが動いてくれる。