自民党の「先送り」は国民ダマしの常套句…防衛増税に関する所得税増税時期の決定延期を喜んではいけない
自民党の宮沢洋一税制調査会長(74)は13日、2025年度税制改正を巡る公明党との税調会合後、防衛増税に関する所得税の増税時期の決定を先送りすることで合意したと明らかにした。 【写真】自民党税調会長・宮沢洋一氏 苦虫を潰したような表情 自民税調は当初、防衛費材の財源について、法人税とたばこ税を26年4月、所得税は27年1月に増税開始を目指すとして、25年度税制改正で決定する方針だった。しかし、公明から所得税増税の実施時期を決めることに慎重論が出たため、自民側が公明案に譲歩する形となった。 これを受け、ネット上では《やれやれ良かった》《法人税とたばこ税の引き上げもやめてください》《これ以上、所得税が増やされなくてよかった》などと“評価”する声が出ているが騙されてはいけない。 あくまで自公両党は増税を開始する時期の「先送り」を決めたのであって、所得増税自体の「廃止」に合意したわけではないからだ。 ■故・安倍元首相は国政選挙前に消費増税を2回「先送り」 増税といった有権者に負担を強いる政策を実施する際、それが国政選挙に影響すると判断した場合、自民が決まって口にする常套句が「先送り」だ。 「アベノミクスの成功を確かなものとするため、消費税10%への引き上げを18カ月延期すべきであるとの結論に至った」 2014年11月。故・安倍晋三首相(当時)は消費増税関連法で15年10月から10%に引き上げることが明記されていた消費増税の実施時期について1年半(17年4月)の先送りを公表。「アベノミクスへの信を問う」などと言って衆院解散、総選挙に臨んだ。 安倍氏はさらに16年7月に行われた参院選の1カ月前、新興国の経済の落ち込みなどを理由に消費増税の実施時期を19年10月に再び先送りすると表明。 結局、増税先送りを決めた直後の衆参両選挙で安倍自民は独り勝ち。その後、国民の反対の声は政府・与党に届くことなく、消費税率は引き上げられることになった。 22年末に突然、閣議決定した安全保障関連3文書で、23~27年度の5年間の防衛費総額を43兆円と決めた岸田文雄前首相(67)も“手口”は同じだ。 世論の強い反発を受けた岸田氏は防衛費増の財源に充てる増税に関する法整備を先送りし、23年10月の衆院予算委員会で増税の開始時期を問われると、「実施時期は27年度に向けて複数年かけて段階的に実施するという枠組み」「景気や賃上げの動向などを踏まえて判断する」として判断先送りを明言。この時も、野党側から「一体いつ増税の具体案が示されるのか」「衆院解散、総選挙を控えているゆえの先送りか」といった指摘が出ていた。 今回の所得税増税の開始時期の先送りについても同様だろう。25年夏は参院選や都議選が予定されており、衆院選で惨敗した公明は両選挙に総力を挙げて臨み、党勢回復に力を入れるとみられている。このタイミングで所得税増税の開始時期が決まれば得策ではないと考えても不思議ではない。 国民は「先送り」ではなく「廃止」を強く訴える必要がある。 ◇ ◇ ◇ 5年間で総額43兆円という大軍拡予算のための増税議論。●関連記事【もっと読む】で『軍需企業を増長させたのは自民党 献金と要望をセットで受け入れ続けてきた』【さらに読む】で『冷戦以降、自民への献金と要望の末に…36兆円を国内軍需企業が受注』を取り上げている。