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名門低迷の要因は中国にあり? エスパニョールが27年ぶり降格。かつて中村俊輔ら在籍

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 現地8日にラ・リーガ第35節が行われ、バルセロナに0-1で敗れたエスパニョールの来季2部降格が決まった。かつて西澤明訓や中村俊輔も在籍し、日本での知名度も高い名門クラブはなぜ低迷してしまったのか。創立120周年を迎えた歴史と伝統のあるエスパニョールが暗闇に迷い込んでしまった要因は、遠く離れたアジアにあったのかもしれない。(文:舩木渉)

●ダービーで降格が決定  降格の瞬間は、静かに訪れた。観客のいないスタジアムの静寂の中で、来たるべき時が来たのだ。天を仰ぐ者やこうべを垂れる者もいたが、選手たちは皆、足早にロッカールームへと下がっていった。  現地8日にラ・リーガ第35節が行われ、バルセロナがエスパニョールに1-0で勝利。この結果、消化試合数が1つ少ない17位エイバルの勝ち点差が11ポイントとなり、最下位エスパニョールの来季2部降格が決まった。  かつて西澤明訓や中村俊輔も所属していた120年の歴史を誇るクラブにとって、27年ぶりの降格はファン・サポーターのいないカンプ・ノウで現実のものとなった。同じ街に本拠地を置くクラブとのダービーマッチで引導を渡されたのだ。  もちろん来季はリーグ戦でバルセロナ・ダービーが見られない。ライバルの降格を喜んでいるバルサのファン・サポーターはどれほどいるだろうか。失われてしまうものの大きさは計り知れない。  勝たなければ降格、という状況でバルサ戦を迎えたエスパニョールは気持ちのこもった守りで耐えていた。前半は相手に決定的な形での守備ブロックの中への侵入を許さず、0-0で折り返す。  バルサの選手たちはフラストレーションを溜めていたことだろう。前節ビジャレアル戦で機能したルイス・スアレスとアントワーヌ・グリーズマンの2トップが狭いスペースの中で機能性を失い、トップ下のリオネル・メッシも力を発揮できずにいた。  ところが後半に入ると、一気に試合が動く。バルサは後半開始からネウソン・セメドを下げてアンス・ファティを投入。セルジ・ロベルトを右サイドバックに移し、4-4-2的な陣形に移行した。  誤算だったのはアンスの退場だ。ボールを確保しようと飛び込んだ際に相手選手と交錯し、フェルナンド・カレーロの右すねにスパイクの裏が入ってしまった。もちろんVAR(ビデオアシスタントレフェリー)は見逃さず、途中出場の17歳にわずか5分でレッドカードが提示された。  エスパニョールは数的優位を手にし、勝利への芽が見え始めたかに思われた。しかし、3分後に予想外のアクシデントが起こる。中盤で奮闘していたBチーム登録の20歳、ポル・ロサーノがアンス・ファティと同じような形でジェラール・ピケの右すねにスパイクの裏を当ててしまい、VAR介入の末に一発レッドカード。せっかくのチャンスを数分で手放してしまった。 ●エンブレムへの誇り「必ず戻ってくる」  バルサの決勝ゴールは、ロサーノが退場した3分後に生まれる。56分、ジョルディ・アルバのパスを受けてペナルティエリア左深くに侵入したグリーズマンが折り返すと、メッシが横に流し、最後は後ろから走り込んでいたスアレスがフィニッシュ。エスパニョールの希望を打ち砕いた。  このダービーで最初のビッグチャンスを迎えたのはエスパニョールで、後半により多くのシュートを放ったのもエスパニョールだった。アウェイでボール支配率26%と終始相手に押し込まれながら必死に反撃を試みるも、1点が遠かった。  試合後、来季の2部降格が決まると出番のなかったエスパニョールのキャプテン、ハビ・ロペスがカメラの前に立ってファン・サポーターに謝罪した。 「今日の試合はチームメイトをとても誇りに思っている。これまでに数え切れないほどのチャンスがあった。僕たちが経験していることに関して、ファンの皆さんに謝罪する。全員にとって困難な時期だと思う。物事がうまくいっていないにもかかわらず、いつも自分たちのもとにいてくれたことを感謝したい。僕たちは、自分たちを再び強くすることに集中していきたい。何よりもこの(エスパニョールの)エンブレムに対する感情があるからこそ、必ず戻ってくる」  34歳のチームリーダーは「僕たちがすべての責任を負う。起こったことすべてに対して責任がある」と、降格を悔やむ。だが、この低迷は今さら始まったことではない。今季の3度にわたる監督交代のゴタゴタや補強の失敗も無関係ではないが、根っこはもっと深くにある。  昨季7位でヨーロッパリーグ(EL)の予選出場権を獲得したチームから、エースストライカーのボルハ・イグレシアス、守備の要だったマリオ・エルモソがそれぞれベティスとアトレティコ・マドリーに移籍。さらにルビ監督もベティスへ引き抜かれた。 ●エスパニョール低迷の要因  夏の移籍市場では主力の抜けた穴を埋める満足な補強ができず。Bチームから昇格させたトップリーグで指導経験のないダビド・ガジェゴ新監督は、10月にあえなく解任に。後釜に据えたパブロ・マチンは3バック主体のシステムに選手をはめ込んでいくタイプの監督で、シーズン途中就任では力を発揮しきれず、こちらも2ヶ月半で解任の憂き目に遭った。  今季3人目の監督は昨季までアラベスを率いていたアベラルドになったが、なかなか思うように勝ち点を積み上げられず。リーグ戦中断が明けて3試合を終えたタイミングで解任となった。そして彼らを評価する立場だったスポーツディレクターのフランシスコ・ルフェテが自ら暫定監督に就任するも、もはや降格の運命を避けることはできなかった。  冬にクラブ市場最高額の移籍金2000万ユーロ(約25億円)を投じてベンフィカから獲得したFWラウール・デ・トマスも4得点と救世主にはなり切れず。ラージョ・バジェカーノから引き抜いたFWアドリアン・エンバルバやヘタフェから加入したDFレアンドロ・カブレラは奮闘していたものの、控えGKのオーイエル・オラサバル獲得は意味不明。付け焼き刃の補強が目立った。  こうした「パニック」とも表現できるような現象が多発する原因は、アジアからクラブを遠隔経営する中国人オーナーにあるとされる。深刻な財政難に見舞われていたエスパニョールを2016年に買収した実業家のチェン・ヤンシェン氏は、普段ほとんどスペインにおらず、遠く離れた中国で意思決定の中枢を担っている。  するとどうなるか。スピード感が失われ、スペインや欧州サッカー界の動きをつぶさに感じられなければ、クラブに必要な選手や監督を正しく見極めるのも難しくなる。実際、チェン氏がオーナーになってから、エスパニョールが冬の移籍市場で選手を獲得したのは毎年すべて「1月24日以降」とギリギリだった。財政面の改善は移籍オペレーションに大きな影響をもたらしたが、一方で現地メディアでは「駆け込み移籍のエキスパート」と揶揄する表現もある。  加入当初はオーナー主導の“ビジネス移籍”と見られ懐疑論が根強かった中国代表FWウー・レイはなんとか戦力になってファン・サポーターからも愛されるようになったが、今季も含めて近年の冬の補強は失敗が多かった。 ●歴史と伝統ある名門が歩む未来  移籍市場で出遅れればめぼしい選手にはどんどん買い手がつき、期限間際になるほど価格は上がっていく。スピード感の欠如は、日々刻々と移り変わっていくサッカー界において致命的だ。  監督交代に関しても、意思決定が遅れれば、その分だけ手の施しようがない状態になっているかもしれない。誰を次の指揮官に据えるかを最終的に決めるのもオーナーだが、現状にふさわしい人材を正しく見極められる能力がチェン氏にあったかも疑問だ。  もちろん、ルフェテ暫定監督の責任も問われるだろう。現役時代にエスパニョールでも活躍した同監督はバルサ戦後に「私には責任がある。責任を回避することはない」と宣言した。そしてクラブに関わる者全員の連帯を呼びかけている。 「新しいエスパニョールを作り上げて戦う絶好の機会だ。アイデンティティを築かなければならない。我々は皆、人々に歩み寄って前進していかなければならない。プリメーラ(1部)に戻るために全力で戦うことを伝えるために、顔を上げてここにいなければならない」  トップチームには代表クラスの選手も多く、2部降格の来季に向けて戦力を維持することは極めて困難だろう。早急に再建を始めなければならない。体制そのものが変わろうとしなければ、1年での1部復帰は実現できない。とにかく課題は山積みだ。  バルサ戦前日の記者会見では「会長(チェン氏)にとって重要なのは、(チームを)クラブとファンにとってふさわしい形に仕上げることだ」と辛辣なメッセージも送っていたルフェテ暫定監督は、2部降格が決まり「未来のエスパニョールは今日から築き上げていかなければならない」と強調した。  ファン・サポーターが誰もいないスタジアムで降格が決まってしまったのは、やはり寂しい。そして、120年の歴史と伝統があるエスパニョールのような名門が1部リーグで見られなくなってしまうのも寂しい。  降格経験のないレアル・マドリード、バルサ、アスレティック・ビルバオを除けば、最も長くトップリーグにとどまっていたクラブの1つがエスパニョールだった。アトレティコ・マドリーやセビージャでさえもこの26年の間に2部降格を経験している。トップリーグでこなしてきた試合数も、マドリー、バルサ、ビルバオ、バレンシアに次いで5番目に多い。  西澤や中村といった日本人のみならず、イバン・デ・ラ・ペーニャやラウール・タムード、マウリシオ・ポチェッティーノ、ダニ・ハルケ、セルヒオ・ガルシア、クリスティアン・ストゥアニ、ホセ・マリア・カジェホン、ルカス・バスケスなど数々の名選手が活躍したエスパニョールは、この2部降格をきっかけに強さと誇りを取り戻せるだろうか。  ダービーマッチの熱狂を欲するバルサのファン・サポーターも、きっとエスパニョールの復活を待っている。決して互いを憎み合うような敵対関係ではないからこそ、そんな気がしている。 (文:舩木渉)

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