“全ては天からの授かりもの” 全編天草ロケ映画「のさりの島」コロナ禍で見つめ直した意味
全編を熊本県天草市で撮影した映画が2020年1月に完成した。しかし、夏の公開は新型コロナの影響で延期に…。コロナ禍の中で監督が見つめなおした天草の言葉「のさり」に込めた思いとは。
引き込まれるシャッター街に引き付けられ…全編天草ロケの映画
■山本起也監督 「まっすぐ一本じゃなくてうねっている、だんだんこの世界のうねりの中に引き込まれていくというか、いくつか気に入った部分があったのだと思う」 京都在住の映画監督、山本起也さん。2020年1月、天草を舞台にした映画を完成させた。タイトルは「のさりの島」。“のさり”とは「いいことも悪いこともすべての境遇は天からの授かりものである」という意味の天草の言葉だ。
オレオレ詐欺の旅を続ける若者が天草にたどり着き、だますつもりだった老女と奇妙な同居生活を始める物語。若者は人生から抜け落ちていた「人のつながり」に気づいていく。 撮影はすべて熊本県天草市で行われた。天草の何気ない景色に加えてかかし祭りなどの風物詩、過去の天草の映像も登場する。
主な舞台となるのが天草市中心部の銀天街アーケード。かつては60店ほどが軒を連ねていたが今は3分の1ほどに減少している。この通りに、山本さんは引き付けられた。 ■映画「のさりの島」山本起也監督 「人がいないシャッターの向こう側にも人のつながりやぬくもりがあるという映画を撮りたかった」 「この場所ならシャッターの向こうに見えるのではないかという感じがした」
ロケ場所、炊き出し、エキストラ…地元天草が全面協力
映画に登場する店の名前や地名は、実在するものをそのまま使用している。 山西楽器は、映画でオレオレ詐欺の電話を受けた女性が営む店に。若者との出会いをはじめ、映画で何度も登場する。
■山西楽器店 山西伸子さん 「私もこんな歳になって何か一つは残せるものがあればいいと思って(映画に協力した)」 「(撮影スタッフの)若い方と接することがあって勉強になったし刺激になった」
撮影場所の提供以外にも、映画には地元の人が様々な協力をした。商店街沿いの靴店が提供したのは2階のスペース。 ■映画「のさりの島」山本起也監督 「撮影の衣装合わせ着替えもここでやっていた。朝は俳優さんがメイクをやっていた」 ■靴のやまだ 山田徳子さん 「スタッフの人たちは深夜12時ぐらいまで頑張っていた」 エキストラや裏方、炊き出しなど協力した地元の人は600人をこえた。 ■靴のやまだ 山田徳子さん 「銀天街のためになればと思いながら参加した」 ■靴のやまだ 山田幸次郎さん 「一つの街の発展になっていけばという気持ちがある」 地元の人とつくった映画。7月の公開を予定していた。