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人工細胞を利用して、細胞内の配置対称性が決まる仕組みを解明

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MONOist

 京都大学は2020年6月15日、生きた細胞を模した人工細胞を構築し、細胞内の配置対称性が自律的に決まる仕組みを解明したと発表した。細胞内には、対称性を維持しようとする力と対称性を破ろうとする力が共存しており、綱引きのようなバランスで対称性が決まることが分かった。九州大学、シンガポール国立大学、早稲田大学との共同研究による成果だ。  細胞の仕組みを調べるには、細胞を制御するタンパク質を遺伝子組み換え技術などで欠損させて、その影響を調べる手法がある。このタンパク質による細胞の制御方法については、仮説を立てても、それを実験的に確認することが困難だった。  今回の研究では、この課題を解決するため、生きている細胞を単純化した人工細胞を使用。人工細胞は、細胞内で力発生を担うアクトミオシンと細胞核を模したクラスターを、リン脂質で包まれた液体カプセルに封入して構築した。  構築した人工細胞は円形をしており、これに細胞核を模した球形のクラスターを入れ、その配置が制御される仕組みを調べた。観察の結果、クラスターは、大きい人工細胞では対称性を担う中央に配置され、小さい人工細胞では対称性を破る縁に配置されることが分かった。  また、人工細胞の辺縁部で発生する周期的なアクトミオシンが中央にクラスターを運び、そのクラスターと人工細胞の縁の間に形成されたアクトミオシン・ブリッジがクラスターを縁に引き寄せていることが分かった。これらの結果から、中央に運ぶ力と縁に引き寄せる力の相反する2つの力のバランスにより、対称性が決まっていることが示唆された。  さらに、アクトミオシンの波を形成するまでの時間(波の周期)は液滴の半径に緩やかに比例する一方で、ブリッジ形成に必要な時間は液滴半径に強く依存していた。このことから、人工細胞の大きさを変化させた際に、2つの時間スケールが入れ替わることで、クラスター配置の対称性にも変化が生じることが明らかになった。  この配置決定メカニズムは、動物細胞に共通する「アクチン細胞骨格が閉じ込められた微小空間」に対して、普遍的に成り立つものと考えられる。今後、動物細胞全般における細胞内構造の配置決めに、新しい知見を与えることが期待される。

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