【世界は愉快:秋のお祭り編】ニューヨークで浸透する、フレンズギビング。
毎月ひとつテーマを設け、お国柄や街の様子をお届けする連載「世界は愉快」。11月は「秋のお祭り」がテーマです。 「世界は愉快」記事一覧 ーーーーー
アメリカのホリデーといえば、11月のサンクスギビング(感謝祭)で、一年の中でいちばん大きなホリデーのひとつ。毎年11月第4木曜で、翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、お店が大セールを行い、日曜まで4連休にする人もいる。翌週の月曜は「サイバーマンデー」と呼ばれ、オンラインショップがセールを行う日で、次の火曜は「ギビングチューズデー」と呼ばれ、チャリティに募金しようという日。サンクスギビングにあやかって、いろいろと行事が多い。 サンクスギビングの起源は、1620年にイギリスから移住したピルグリムファーザーズ(清教徒)が、ネイティブアメリカンにトウモロコシなどの作物の栽培方法を教えてもらい、寒い冬を生き延びることができたことに遡る。翌年は収穫に恵まれ、ピルグリムとネイティブアメリカンが一緒に恵みに感謝して、ごちそうを食べて祝ったことが始まりだとされている。現在は、親戚や家族が集まり、ターキーの丸焼き、マッシュドポテトやパンプキンパイを食べて、フットボールの試合を観たりする家族団欒の祝日だ。
だが最近では、「もともと住んでいたネイティブアメリカンの人のところへやってきて、白人が征服した事実を祝うのか?」と疑問視する声が上がっていたりする。特にニューヨークの若い世代は白人的ストラクチャーを問題視する傾向があるので、長い間続いている伝統であれ、物事を再考する姿勢がある。
いっぽう、ここ数年の間に浸透してきたカルチャーで「フレンズギビング」というものがある。要は友だち同士で祝うサンクスギビングだが、感謝祭の前の週末や前日に行われることが多い。または実家に帰らないと決めた友だち同士が当日に祝うことも。アメリカでは、家族や親戚が集まると決まって政治の話になるので、コンサバな叔父や銃が好きな従兄弟に会うのが嫌だとぼやく人も。支持する政党が違う、義理の家族ともなればさらに気を使うことになるので、行きたくないとため息をついている人も本当に多い。政治的見解が違う家族と憂鬱な食卓を囲むくらいなら、気のおけない友だち同士で祝った方が楽しめる。そんな背景もあり、ニューヨークのフレンズギビングのカルチャーは加速してきたように感じる。