あらゆる面で発電できる「ペロブスカイト太陽電池」の可能性
パナソニックが開発を進めるペロブスカイト太陽電池
先月ベルリンで開催されたIFA 2024のパナソニックブースには、ペロブスカイト太陽電池の展示がありました。 同社が開発しているガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池はガラス板としてビルや施設に使えるほか、ガラスに挟むことで耐久性を高めています。 さらにおもしろいのが、このガラスに挟んだペロブスカイト層は透過性やパターンをカスタマイズすることができる点です。 たとえば会議室の仕切りなど、ガラスを使いながらも透過性を下げたい場合、現在ではすりガラスであったり、普通のガラスにフィルムを貼ったりしています。ペロブスカイト太陽電池であれば、どれだけペロブスカイト層を詰めるかによって透過性を調整することができるため、眺めが良い高層オフィスの窓は低めの40%、ある程度光を遮りたいバス停のひさしは70%、従業員専用入口のドアは100%などとすることができます。 ブースの担当者の方によると、赤外線と紫外線は透過するものの可視光はブロックされるため、夏場には室内が涼しくなり、「創エネ+省エネ」という一石二鳥が達成できるとのことでした。パターンの印刷も、配線のハードルさえ乗り越えてしまえばできるとのことでした。 ペロブスカイト太陽電池でネックとなっていた変換効率も、パナソニックでは業界最高水準の18.1%を達成しており、モデルハウスでの実証実験もいつから始まっています。パナソニックでは、2026年からは市場でのテストを行い、2029年には市場投入を目指しているとしています。 パナソニックのペロブスカイト太陽電池は、ガラスに挟んでいるためシリコン系と同じく、曲げることができず、大幅な軽量化とはなりません。しかし、「窓」を発電に使えるため、発電可能な面積を大幅に引き上げることができますし、機能性もあるためこれまで導入が検討されていなかったところも設置候補となります。
ペロブスカイト太陽電池の使い道は他にも
大切なのは、これはペロブスカイト太陽電池の実用例の一つに過ぎないということです。前述の通り、ペロブスカイト太陽電池は、「軽く、曲げられ、低コスト」がメリットとなっており、これまで難しかったところにも設置できるようになります。曲面が多い車のボディーや、毎日持ち歩くアイテムやデバイスの表面なども候補に上がってきます。また、軽さを活かして従来のシリコン系太陽電池の上に乗せ、「太陽光の二重取り」をするという実証実験も行われています。低コスト化が進むと、廉価なアイテムにも搭載されるようになるかもしれません。 どんな面でも太陽光発電ができるようになると、どこを発電に使うべきで、どこを使わないべきかの線引きが、「できる、できない」から「する、しない」に移ります。現実的に、できるからと言ってなんでもすべきではありませんが、あらゆる面が発電に使える近未来を想像してみるのも楽しみかもしれません。
Kohei K