東京国税局、インフルエンサー9人に計3億円の申告漏れを指摘・追徴課税…どこが問題だったのか? 海外法人設立に詳しい弁護士が解説
海外のペーパーカンパニーを利用したインフルエンサーが東京国税局から申告漏れを指摘されて追徴課税を課されたとの報道がありました。しかし、海外法人を活用したビジネスを行う方々も、非合法となるラインが見えにくく、気になるところです。海外法人の設立に詳しい弁護士が解説します。※本記事は、OWL Investmentsのマネージング・ディレクターの小峰孝史弁護士が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
税務当局「税金、ごまかすなよ…!」
東京国税局が9人のインフルエンサーに対し、合計3億円の申告漏れを指摘、8,500万円を追徴課税したとの記事が、 2023年3月8日付の読売新聞に掲載 されました。 3月8日付ということは、確定申告の提出期限直前という時期で、税務当局の「税金をごまかすなよ」という警告のような記事ですね。 記事によると、このインフルエンサー達は、企業から報酬をもらって、それら企業の商品やサービスを宣伝していた、いわゆる「企業案件」を扱っていたが、確定申告をしていなかったり、報酬額の一部しか確定申告をしていなかったりしていたそうです。 とりわけ「うち1人はSNSを通じて販売した情報商材の売り上げを海外のペーパーカンパニーの収入と装い、所得を隠していたという。」という部分が、海外法人を設立し利用している方も多い方は気になる部分でしょう。そこで、この部分に注目しながら、読み解いていきたいと思います。
日本で所得発生 →「税金高い!」→ 低税率国・地域に所得移動
海外のペーパーカンパニーを利用していたインフルエンサーが具体的にどういう仕組みを作っていたのか、記事には詳しく書かれていないのですが、おそらく以下のようなものだったと思われます。 (1)このインフルエンサーは、企業から商品・サービスを紹介して欲しいという依頼を受けて、その商品・サービスを紹介する、いわゆる「企業案件」を扱っていた。 (2)ところが、この「企業案件」を、インフルエンサー個人として受託すると個人として所得税がかかるし、法人で受託するとしても日本の法人税は高いことが気になっていた。 (3)そこで、日本よりも法人税の低い国・地域に法人を設立し、その法人で受託することにした。 つまり、日本で所得が生じると高税率の税金がかかるので、低税率国・地域に所得を移したわけです。 本件でインフルエンサーがどの国・地域にペーパーカンパニーを設立したかは、記事には書かれていませんでしたが、もし香港であったなら、法人税率は8.25%(所得が200万香港ドル=約3,000万円までの部分の税率)に抑えることができたということです。日本の法人税率は約30%ですから、3分の1未満です。