「あと3回くらいほしかった」 文学大河に込めた思い 脚本の大石静が語る「光る君へ」
平安時代に長編小説「源氏物語」を執筆した紫式部の人生を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」。まひろ(後の紫式部、吉高由里子)は、書くことに生きる意味を見出し、1000年後まで残る「源氏物語」を完成させた。作家として生きるまひろに刺激を与えたのが、清少納言や和泉式部や女流作家たち。直秀や周明といった、庶民のオリジナルキャラクターもまひろの人生観に影響を与えた。文学者が主役という異例の大河に込めた思いについて、脚本家の大石静さん(73)に聞いた。 【写真】ちゃめっ気たっぷりに笑う吉高由里子「『あのマダム(脚本の大石静)め』って思いました」 ■女流作家たちが活躍 まひろと道長のラブストーリーや内裏の権力闘争が注目されたが、文学者としてのまひろの生き方も作品の重要なテーマだ。作家として創作活動に目覚めていく過程が丁寧に描かれた。まひろは道長の依頼で物語を書くことになり、源氏物語を思いついたのが、第31回。放送開始から8か月を経てからだった。 文学者としてのまひろに影響を与えたのは、劇中に登場したさまざまな女性作家たち。「書くことで己を救った」とまひろに語りかけたのは、蜻蛉日記を記した、道綱の母、寧子だった。中宮・定子の華やかな姿を随筆「枕草子」に残した清少納言。己の情熱を歌に込めた和泉式部、かな文字の歴史物語「栄花物語」を書いた赤染衛門-。 「初期のころは、いろいろな文学者たちの葛藤を描きたいなと思ってたんですけど、意外にやることが多くてあまり描けなかったですね。赤染衛門は源氏物語にはかなわないわと思いつつ、自分の道を探して栄花物語を描いていくというのを描きたかったんですが、全く足りなくなってしましまいました」と話す。 ■貴族ではない人物を 史実に沿って物語が進むなか、まひろの人生観に影響を与えたのがオリジナルのキャラクターたちだ。 前半に登場した散楽のメンバー、直秀。まひろが越前で出会った宋の見習い医師・周明は、貴族とは全く違う価値観の持ち主だった。「平安時代、貴族は1000人ぐらいしかいなかったんですよ」と話す。民衆の数と比べるとわずかな人数の貴族たちの話だけで物語を展開するのではなく、「庶民を出さなきゃいけないと思った」と明かす。 終盤に登場したのが武者の双寿丸(伊藤健太郎)だ。まひろの娘、賢子と出会い親交を深めるも、大宰府にわたった。