“牛丼一筋”“券売機は拒否”だった吉野家が「タブレット注文のカレー専門店」開店 変化が示す「日本の外食」のゆくえ
から揚げ、そば、生パスタ…なぜ新業態が続々と?
♪牛丼一筋、80年~ とCMで謳っていたのも、やはり過去のこと。 吉野家は今回のカレー専門店だけでなく、12月19日には神奈川県・横浜にからあげ専門店「でいから」(環状4号線下瀬谷店)をオープンさせる。 すでに牛かるび丼・スンドゥブ専門店「かるびのとりこ」を5店舗、そば専門店「そば処吉野家」も7店舗展開しているのだ。 ライバルの松屋も、今年1月31日に生パスタ専門店「麦のトリコ」を神奈川県・川崎にオープンした。店内製造の生パスタがおいしく、筆者は近所に住んでいることもあり、時折食べに行く。とんかつの「松のや」やカレーの「マイカリー食堂」はすでに訪れたことのある読者も多いであろうし、今や寿司の「すし松」まである。 近年、こうした牛丼チェーンの新業態の開発が活発になってきているのはなぜか。 これまで、外食産業は新業態開発よりもM&Aが主流だった。実際、吉野家も2004年に「はなまるうどん」と業務提携し、2012年は完全子会社化している。このような外食のM&Aは、異業態のノウハウが手に入り、既存の優良立地の店舗が手に入るなどのメリットがある。 最後発で牛丼に参入した「すき家」を運営するゼンショーグループは象徴的で、M&Aによって 「はま寿司」「なか卯」などを傘下におき、2000年からの20年間で売上高を36倍に伸ばした。国内とグローバル展開で外食日本一の地位を確立しており、「すき家」自体も 国内外で店舗数を拡大させ、店舗数・売上高ともに牛丼チェーン3社の中でトップに立っている。 一方、効率面で難はあった。企業風土のすり合わせや、買収された会社の従業員の引き受け、物流センターや、オフィスのダブつきなどが生じるのだ。その点、自社での新業態開発であれば、こうした問題はない。セントラルキッチンやアルバイト及び従業員、店内のシステム、店舗立地開発のノウハウなどを、そのまま共有できる。吉野家も、新業態に「吉野家の食材を一部活用 」と明言している通り、食材の共通化ができれば、マスメリットにより仕入れのコストダウンも図れるのだ。