「遺族年金」と「離婚時年金分割」 相反する2つの制度を並列的に確認します
夫婦であることが前提の遺族年金と夫婦ではなくなったことが前提の離婚時年金分割では前提となる条件、支給開始時期、支給額は全く異なります。 元記事で画像を全てみる 今回は相反する2つの制度を並列的に確認していきましょう。 また、子供にも支給可能性がある遺族年金ですが、今回はご夫婦のいずれかしか支給対象でないことを前提に解説を進めてまいります。
遺族基礎年金とは
遺族年金には2つの種類があります。 その1つが国民年金から支給される遺族基礎年金です。 要件は、他界した配偶者との「生計維持関係」があることと、障害を有しない18歳年度末到達前の子を有する配偶者が支給対象となり、障害のある子を有する配偶者の場合は子が20歳到達前までが支給対象です。 すなわち、遺族基礎年金は受給するのが夫であっても妻であっても子供がいなければ支給されないという年金です。
遺族厚生年金とは
2つ目は厚生年金から支給される遺族厚生年金であり、他界した配偶者との「生計維持関係」があることが要件です。 また、遺族基礎年金と異なり「子を有する」が要件にありません。 しかし、遺族厚生年金は受給するのは夫か妻であるかによって要件が異なります。 夫の場合は(妻死亡時の)年齢が55歳以上であることが要件です。 妻の場合は(夫死亡時の)年齢が30歳未満の場合には以下の2点の制約が課されます。 【制約1】遺族厚生年金と同一の支給事由である遺族基礎年金の受給権を有していない場合 遺族厚生年金の受給権を取得した日から5年を経過したときに失権 【制約2】遺族厚生年金と同一の支給事由である遺族基礎年金の受給権を有している場合 遺族基礎年金の受給権が消滅した日から5年を経過したときに失権 女性向けの夫が他界した場合の他の給付については以下の記事が参考になります。
離婚時年金分割とは
婚姻期間中の標準報酬(年金の加入記録)を多い方から少ない方へ分割する制度です。 よくある質問で「年金額」を分割するということではありません。 そして、国民年金には標準報酬という考え方は存在せず、離婚時の年金分割の対象にはなりません。 よって、夫が自営業による国民年金第1号被保険者で妻が会社勤めにより国民年金第2号被保険者の場合は妻から夫へ年金分割をするということもあります。 会社勤めの妻は多くの場合、厚生年金の被保険者であり、イコール国民年金の第2号被保険者にあたります。