3530万円のスーパーカーは空を飛べるかも!? 驚異的なパフォーマンスとは
驚異的なスピード感
今回ロングツーリングのお供となった720Sに乗ってあらためて思ったのは、やはり乗り味のダイナミックレンジの広さだった。 路面状況が刻々と変わる公道であっても、然るべき場面では600LTより応答の俊敏さを感じる場面もあれば、GTよりふんわりした穏やかなタッチに癒やされる場面さえある。あらためてマクラーレンはシャシーのクルマだなぁと感心させられた。 MP4-12Cに合わせて新規開発された3.8リッターV型8気筒エンジンは、720Sでは4.0リッターに拡大、パワーは車名の由来でもある720psに達している。 登場当初は額面通り仕事はするものの、吹け感やサウンドなどの情感に乏しい、ある意味イギリス車らしいエンジンだなぁと思っていた。が、今やこちらも退屈させられることはない表情をみせてくれる。低~中回転域はターボの存在感を余り匂わせずフラットな印象であるが、高回転に向かうにつれてのパワーの駆け上がりやスッキリした吹け切りなど、スポーツカー・ユニットとしての爽快感もしっかり備わった。 そしてなにより、その“火力”は圧倒的だ。持ち前の前方視界の良さもあって、そのスピード感はクルマのそれというよりも、空飛ぶものでも扱っているのかと錯覚させられるほどである。 720Sの価格は3530万円。GTより約900万円、600LTより約500万円高価だ。そもそものハードルからして高いというのに、到達までには他銘柄だけでなく、身内にも難敵が待ち構えている。でもフルコンプのマクラーレンで得られる世界の濃さを思えば、この敷居の高さもむべなるかな、というべきなのかもしれない。
文・渡辺敏史