Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

イスタンブールで4回目の「文明転換」 アヤソフィア 再モスク化が意味すること

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
47NEWS

 イスタンブールと言えば、誰もがアヤソフィアを思い浮かべる。複雑な歴史を背負い、博物館となった建造物だ。トルコのエルドアン大統領は7月10日、この名所をイスラム教のモスク(礼拝所)に戻すと決めた。すると、欧米を中心に失望や批判が相次いだ。一博物館のことでなぜ世界中が喧々囂々(けんけんごうごう)となるのか。この地で絶えず繰り返された「文明間のせめぎ合い」の文脈から、読み解きたい。(文明論考家、元駐バチカン大使=上野景文)  ▽火種  アヤソフィアは6世紀、東方正教会の大聖堂として建立された後、15世紀にはイスラム教のモスクに、さらに、20世紀には宗教色を除去した博物館に変貌する(二大宗教「共存の象徴」と見る人もいる)など、数奇の運命をたどった。その間1985年には「イスタンブール歴史地区」の一環としてユネスコの「世界文化遺産」に登録された。  「本来あるべき姿に戻った。数十年にわたる国民の思いを実現した」

 7月24日、アヤソフィアが、モスクに戻されてから最初の金曜礼拝に参加したエルドアン氏は、こう語ったと伝えられる。周囲は人々であふれ、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と連呼する信者の姿も見られた。  現地の高揚とは対照的に、欧米諸国は「政権の人気浮揚策だ」「宗教間の溝を広げる」などの批判が巻き起こった。  一連の反発は、エルドアン氏個人に向けられたものが多い。権威主義的な政治手法に対する根強い不信感の表れなのだろう。ただ、エルドアン氏の問題と片付けてしまうのでは、問題の核心は捉えられない。より大きな歴史的文脈で、今回の問題を捉える必要があろう。  それでは、アヤソフィアの再モスク化とはいったい何なのか。アジアと欧州のはざまにあり、世界でも屈指の「文明の交差点」と言われるイスタンブールは、この1700年の間に文明の交代劇を4回目撃してきた。  それは、文明と文明の「せめぎあい」の結果であり、現在、4回目の文明大転換――西欧的な世俗主義文明からイスラム文明へ(=政教分離主義から宗教国家へ)――のさなかにある。今回の不協和音はそのような大転換を反映する出来事であり、主役は文明そのものと言いたい。エルドアン氏は、こうした大きなうねりの中で「役割」を与えられた一介のアクターに過ぎないのだ。

【関連記事】

最終更新:
47NEWS