使用後は溶かしてリサイクル。「紙」でできたWi-Fiルーター
例えばPapeのWi-Fiルーターはケースのように開くことができ、その内側には製品の回収用の紙製封筒が入っている。ユーザーは使い終わったらこの封筒にPape製品を入れて、メーカーに送付。メーカーが封筒ごと製品を水に入れると封筒とPape製品の紙の部分が全て溶け、最後はリサイクル可能な金属部品とプラスチックでできた細い骨組みを水の中からすくい上げるのみ、といった具合だ。
同シリーズを開発したのは、オーストリアのFHヨアネウム大学の学生、Franziska Kerber氏。2024年のジェームズ・ダイソン・アワードでアメリカの国内最優秀賞を受賞し、国際最優秀賞を決めるTOP20に選出された。 Kerber氏は、アワードのウェブサイトで、 「小型電子機器は、廃棄方法が明確でないことやサイズが小さいことから家庭ごみになりやすい。したがって、よりユーザーフレンドリーな廃棄システムを開発する必要があると考えました」 と綴っている。今後はより機能的なプリント回路基盤を開発し、製品化に向けて投資家を探していくことを目指しているという。 既存の製品を回収したりリサイクルしたりするための仕組みの構築も大事である一方、製品の設計段階から循環させることを前提にデザインすることを、サーキュラーデザインと呼ぶ。Papeは、まさにこのサーキュラーデザインの好事例ではないだろうか。
※Global Transboundary E-waste Flows Monitor 2022 (https://ewastemonitor.info/wp-content/uploads/2022/06/Global-TBM_webversion_june_2_pages.pdf)
相馬素美(そうまもとみ) 横浜で生まれ、大学ではクラシック音楽を専門に学ぶ。ヨーロッパのサステナブルな取り組みや、サーキュラーエコノミーへの関心が特に高い。また、ソーシャルグッドな音楽ビジネスの可能性を研究中。好きなものは、音楽全般、アート、ファッション、北海道、アボカド、チョコレート、日本酒。(この人が書いた記事の一覧)(https://ideasforgood.jp/author/Souma-Motomi/)
編集:IDEAS FOR GOOD