イタリア地震 進まない建物の耐震対策 マフィアの復興事業への介入を警戒
復興事業の隅々にまで介入するマフィアの存在
イタリア検察当局でマフィア関連犯罪を担当する部署を率いるフランコ・ロベルティ氏は27日、イタリアのラ・リパブリカ紙のインタビューに対し、「これまでの過ちを繰り返してはいけない」と語った。ロベルティ氏によると、1980年にナポリ近郊で発生し、2400人以上の死者を出したイルピニア地震以降、復興事業にマフィアが関与する例が後を絶たなくなったのだという。また震災前に建てられたアパートなどでも数多くの欠陥工事が見過ごされたままになっており、施工業者は地元のマフィア組織「カモッラ」と強い結びつきがあったのだという。 イタリア各地で頻繁に地震が発生することは前述したが、ロベルティ氏が指摘する復興工事とマフィアとの関係は決して珍しい話ではないようだ。2009年に発生したラクイラ地震の復興事業をめぐる不正行為について捜査していたイタリア当局は、南部カラブリア州のマフィア「ンドランゲタ」が工事を不正な方法で入札したと判断。ラクイラ近郊に住む実業家ら3人はすでに起訴され、今月中に裁判所で判決が言い渡される。イタリアには4つの巨大なマフィア組織が存在するが、シシリアのコーサ・ノストラは近年衰退傾向にあるとも伝えられ、今世紀に入ってからはンドランゲタが勢力の拡大に一番成功したという報道もあるほどだ。 マフィアの介入が指摘されるのは復興事業だけではない。イタリア南部のカンパニア州からカラブリア州にかけて建設された高速道路は長さが440キロにも及ぶが、工事が開始されたのは50年以上前。完成時期が何度も遅れ、一部はまだ工事中で、現在は2017年までに完成する見通しをイタリア政府が発表している。工事が50年以上もかかった背景には、地元マフィアとの癒着や汚職が横行し、 資金が何度も底をついたためであった。高速道路の建設予定地の近くにマフィア幹部の邸宅があった場合には、わざと迂回させるように曲がった道路が建設され、多くのエリアで地元のマフィアを施工前に「納得」させる必要があったのだという。これまでに総額で1兆円以上がこの高速道路建設に使われており、資金難を理由にEUによる助成金も投入されたが、工事に関する不正行為が数多く報告されたため、2011年にEUはイタリアに対し約600億円の助成金返還を要求している。