再審無罪判決の「袴田事件」 決め手となった血痕の「赤色」を数値化して立証した“光学”に基づく新鑑定とは
「光学」に基づき色を数値化、証拠のねつ造を立証
光学とは、光の性質や光と物質の相互作用などについて研究する学問。そして、「色」とは光の波長である。新鑑定では「CIE1931xyz表色系」を用い、写真の色を数値化し特定した。 衣類に付着した直後の新しい血痕は「彩度」(鮮やかさの度合い)が高いため赤色だ。しかし、みそに漬けられたまま時間が経てば血痕の彩度は低下し、黒色になっていく。一方で、衣類の白い生地はみそに染まって黄色くなっていき、彩度も上昇する。 ところが、鑑定の結果、証拠写真の衣類の血痕は1年2か月みそに漬けられたと主張されているにもかかわらず、彩度が高いままだった。さらに、生地の彩度もほぼ上昇していなかった。 以上の点から、証拠として提出された衣類は短期間みそに漬けられただけであり、ねつ造されたものであることが証明される。 「袴田さん支援クラブ」広報担当の白井孝明さんは「衣類のねつ造という事実は、科学的な検証によって、より盤石になった。この証拠についてこれ以上争うのは、まったく時間の無駄だ」と、新鑑定の意義を強調した。 また、小川秀世弁護士は「通常、色を判断するためには、主観的な部分がどうしても混ざってしまう。今回の新鑑定は、色の問題を定量的・客観的に明らかにした点が画期的」と語る。 「今後、国賠訴訟などを行う場合には、国側がねつ造を行った証拠として新鑑定を使用することになるだろう。 こちらには強力な武器があるんだと、検察側に伝えたい」(小川弁護士)
弁護士JP編集部