迅速な開発をサポート アヴネットが英アームと提携
製品開発サイクルの短期化やeコマースなど販売形態の多様化もあり、半導体商社の役割は大きく変化している。製品を仕入れ、最終ユーザーに供給するようなトレーディングビジネスは昔の話。現在では製品の設計・開発段階から関わり、顧客の要望を聞きながら最適な製品を提案する。場合によっては、顧客が求める機能を組み上げ、モジュールやシステムオンボードにして提供することもある。半導体商社各社が、独自の強みを生かし差別化していくために、製品の製造プロセスにおける上流から製品やサービスを提供できる技術力が求められる。 半導体・電子部品のグローバルディストリビューターであるアヴネットはこのほど、英アームとプロセッサーIP製品の販売推進に関するパートナーシップ契約を締結した。カスタム半導体へのニーズが多様化する中、より幅広い製品およびサービスの提供を行う。 製造業をはじめグローバルな市場においては昨今、自社製品の差別化や消費電力の低減、コスト効率向上などの目的で、特定用途に最適化して設計されたカスタムチップであるASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)の需要がますます高まっている。その一方、ASIC開発には工数がかかる上、ノウハウや専門知識が必要。こうしたことが、多くの企業にとって課題となっている。 今回、アヴネットはアームとのパートナーシップを通じて、アームの広範なエコシステムを活用できるようになる。以前から同社の持つ、製品開発の企画から設計・試作、量産までワンストップで提供できる強みにアームのIPソリューションを加えることで、顧客ニーズに迅速に対応する。 アヴネット日本法人の茂木康元代表取締役社長は「長年、顧客の近くでさまざまなニーズを聞き、ソリューションを提供してきた。今回のパートナーシップにより、さらなる多様なソリューションを提供していく」と話す。 今後、人工知能(AI)の電力問題やさまざまな要求に応えるため、専用AIチップの開発が増えると予想されている。こうした動きに伴い、ASICの需要も増えていく。今後も半導体商社が担う役割は重要となる。AIのほか幅広いアプリケーションが抱える課題を解決するため、半導体商社は高い技術力で対応していく。
電波新聞社