【老後生活のための階段リフォーム】「転倒防止のカーペットは薄手が望ましい」「照明は足元に」…失敗しないためのポイントを紹介
住み慣れた家で最後まで過ごしたいという思いからリフォームを検討している方も少なくないだろう。しかし、多額の費用をかけてリフォームをしたのにも関わらず、かえって住みづらくなったり、リスクが増加するケースも見られるという。今回は、改築のプロが階段リフォームのNG項目を伝授する。 【図解】階段リフォーム失敗例 階段の照明で影ができると転倒リスクが上がる
1段の段差を小さくしたけど、階段を使わなくなった
階段での転落は重大な事故につながる。2022年の「政府統計人口動態調査」によると、階段での落下死亡者数は593人。毎年600人近くが亡くなっているという。 階段の上り下りが辛くなってきたらリフォームを検討したいが、多額の費用を無駄にするケースがある。2年前、自宅の階段をリフォームした愛知県在住のDさん(67)が語る。 「階段の長さを伸ばすことで勾配を緩くし、1段ずつの段差を小さくしました。リフォーム費用は100万円以上かかりましたが、長くこの家に住むには必要だと思い断行しました。ところが結局2階に上がるのが億劫で1階で生活するようになり、階段を使うことがほとんどなくなってしまったのです」 Dさんのようなケースは少なくない。リフォームとリノベーションを専門とするケアフル株式会社代表の白子靖将氏が指摘する。 「子供が独立した夫婦は1階が生活の中心になりやすく、階段のリフォームは無駄になりがちです。リフォームする前に、“本当に必要な工事なのか”と立ち止まって考えることが必要です。 階段での転倒を予防するなら手すりの設置を検討してもいい。手すりだけなら3万~5万円で済みますし、こうした小さな改修で十分なケースがあります」
転倒事故の予防につながるリフォーム例
また、階段にカーペットを張ると滑りにくくなり、転倒事故の予防になるという。 「その際は厚手のカーペットだと足が引っかかりやすいので避けましょう。薄手で衝撃吸収性能の高いカーペットを選ぶのが望ましい。 正方形のタイル型カーペットを何枚も貼っていくよりも継ぎ目のないロールカーペットを専門業者に敷いてもらう方が安全性は高まります」(白子氏) 階段を明るく照らすために照明を付けることも転倒防止に効果的と考えがちだが、注意点がある。一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏が言う。 「階段の天井に光量の強い照明を設置すると、自分の体が影になり、むしろ足元が見えにくくなって転倒リスクが高まります。照明は場所が大切で、天井ではなく足元に設置しましょう」 白内障など目の手術後は照明を眩しく感じ、階段が見えにくくなることもある。 「照明は明るければいいというわけではない。基本的に、ホームセンターで売っている小型の照明で十分です」(尾間氏) ※週刊ポスト2024年11月22日号