スラップスケートOKで高速水着禁止の過去…ナイキ厚底シューズは“技術ドーピング”なのか、それとも技術革新なのか?
全身を覆うスーツ型の水着で、特殊加工で縫い目がなく撥水性にすぐれたウレタンが一部に素材として取り入れられた。体をスーツ内に押し込み、体型そのものを変えてしまうことで、水抵抗を減らして浮力が生まれ、2008年の北京五輪では世界記録が23個も生まれた。当時、北京五輪前に、日本水泳連盟は、3社のスポーツメーカーとスポンサー契約を結んでいたため、日本代表選手は「レーザー・レーサー」を使用することができず、五輪連覇を狙う北島康介氏を見ていた平井伯昌コーチらが「金メダルを取るためには必要」と訴え、北島氏は6月のジャパンオープンで「レーザー・レーサー」を着て世界記録を樹立。結局、水連も「レーザー・レーサー」の使用を認め、北京五輪では北島氏は、2つの金メダルを獲得した。だが、その1年後に、国際水連は、”魔法の水着”の使用禁止に踏み切る。 記録の短縮幅や、更新率が飛躍的に増加したことと、「レーザー・レーサー」が約7万円と高額で、一部の選手しか手に入れられないという不公平さと、水着の素材により浮力が生まれることが数値で証明されたことが問題視された。 全身スーツは禁止となり、素材も新素材はダメで布地であることが規定された。「技術ドーピング」と「アンフェア」という世論に反応したのである。その背景には、他スポーツメーカーからの圧力があったともされる。「レーザー・レーサー」の使用禁止で、一時、記録更新ラッシュは止まったが、その後は、再び更新されるなど「レーザー・レーサー」の登場は水泳界のレベルをアップさせることに一役は買った。 そして、今回、また10年後に厚底シューズの登場である。 ナイキのこのシューズは、スラップスケートか、「レーザー・レーサー」か、どちらのパターンに当てはまるのか。比較をするならば、同じシューズのスラップスケートとの対比だが「レーザー・レーサー」との類似点もある。 問題は、厚底の中にあるカーボンファイバー製のプレートの存在だろう。これが反発力を生み、走りの推進力をサポートしているとされている。海外メディアによると、「その他のレース用シューズに比べて走力効率で4%のアップが見込まれる」とのことでキプチョゲらナイキが契約している選手には、プロトタイプが用意され、さらに推進力が増しているという。