なぜ浦和レッズは”無冠”返上に向けて新戦力を3人しか補強できなかったのか?
実際、レッズは3年続けてシーズン途中で指揮官が交代している。2012シーズンから指揮を執ってきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督が2017年夏に解任されると、堀孝史監督、大槻暫定監督、オズワルド・オリヴェイラ監督、そしていま現在の大槻監督と体制が目まぐるしく変わってきた。 所属する選手たちの地力の高さもあって2017シーズンのACL、2018シーズンの天皇杯とタイトルを手にしてきた。しかし、土台となる明確なコンセプトがない状態がもたらす歪は昨シーズンの国内リーグにおける低迷となって表出。前身の三菱重工業サッカー部時代から、生え抜きとしてプレーしてきた土田氏をして「浦和との距離が、だんだんと空いてきた」と言わしめる状況に直面した。 レッズと言われれば、埼玉スタジアムを真っ赤に染める熱狂的なファン・サポーターの存在が真っ先に思い浮かぶ。チームの方向性が見えづらい状況に対して、応援を介して寄せられる期待は常に大きい。ギャップの大きさが他のチームでプレーする選手たちにはプレッシャーに映り、実質的な補強がレオナルドと高卒ルーキーの武田だけにとどまった要因となったのかもしれない。 「まだ終わりではないので、点数をつけられるような段階ではありません。それでも、十分な補強ができていると思っています」 これまでの流れから一転して少数精鋭となった補強をこう位置づける土田スポーツダイレクターは、初めて開幕前のキャンプから指揮を執る大槻監督のもとで正しい方向性が与えられれば、これまでは燻っていた感が強い現有戦力を中心に必ずいいチームを作れる――という青写真を描く。 「今年はフラットになってのスタートであり、大槻監督もそういうところをしっかりと見ている。若い選手たちがチャンスをどんどんつかんでいけば、非常に楽しみなシーズンになると思っている」 今後は14日から約1ヶ月近くのキャンプを行い、過去の実績も何も関係ない、横一線の競争を介してチーム力をあげていく。3年計画の1年目の目標はJ1における得失点差を、昨シーズンのマイナス16からプラスで2桁以上に転じさせた上で、2021シーズンのACL出場権を獲得すること。一敗地にまみれたレッズが覚悟を決めて、常勝軍団へと進化を遂げるための挑戦をスタートさせる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)