レバノン大爆発後、早産やうつに 妊婦らに恐怖の後遺症
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【10月15日 AFP】レバノン人のラナ・ミネイミニ(Rana Mneimneh)さん(25)は7か月前、妊娠が分かって大喜びした。だが8月4日に首都ベイルートの港で大規模爆発が起きてからは、おなかの中の娘のことを思うと、気が気でない。 首都ベイルート・バショーラ(Bashoura)地区で妊婦を対象に無料診療を行っている施設で取材に応じたミネイミニさんは、「わくわくしながら初めての出産準備をしていましたが、あの爆発が起きてからはすっかりやめました」と語った。 過去数十年間で最悪の経済危機に陥っているレバノンは、今は新型コロナウイルスの感染拡大と闘っている。そんなレバノンのベイルートで8月に起きた爆発は、核爆発以外では史上最大級のもので、190人以上が死亡、数千人が負傷、市内の広域が破壊された。 爆発によって自宅から避難を余儀なくされることはなかったが、ミネイミニさんはあれから約2か月たった今も、今度は何が起きるのかと恐怖におびえている(実際、この取材後の今月9日にもベイルートで爆発と燃料タンクの火災が発生した)。 「娘のベビー服などにお金を使う代わりに、貯金することにしました。どこかへ移動したり、娘のために緊急に何かが必要になったりするかもしれないから」とミネイミニさん。 「また爆発が起きるのではないかと常にびくびくしています。車や何かの爆音がすると、体がすくみます」 国連人口基金(UNFPA)によると、あの大爆発で自宅に住めなくなった約30万人のうち、推定8万4000人の女性が妊娠可能年齢にある。妊娠中だったのは約4600人で、現在、妊娠中から産後までのケアを必要としているという。 爆発と経済の崩壊により、自宅に住めなくなった人々、そしてミネイミニさんのように日々の生計を立てるのに苦労している女性は、国際基金で支えられている保健センターで無料のヘルスケアを求めてきた。 ■レバノンを離れることを考える女性たち ベイルートのバスタ(Basta)地区の移動診療所内で働く助産婦のヘバ・コウダリー(Heba Khoudary)氏(34)は、妊婦たちは苦しみ、爆発直後に早産や出血を経験するか、うつ病になった人もいると話した。 コウダリー氏によると、バスタの移動診療所は妊婦に無料で超音波その他の検査を実施し、別の保健センターに紹介している。 マカッセド・イスラム(Makassed Islamic)協会が運営している同移動診療所は、爆発後にUNFPAによる支援が行われるようになった三つの診療所の一つだ。爆発以来、こうした移動保健センターが診療してきた女性は600人以上に上る。 シリア難民のリマ・ジャシム(Rima Jassem)さん(33)は、8月4日の爆発から数日後に診療所に駆け込んだ。恐怖のあまり、流産するのではないかと思ったためだ。 その後、女児を出産したジャシムさんは、「爆発以降、眠れなかった。頭の中で繰り返し(爆発の瞬間が)再生され、また起きるのではないかと体がすくんでしまう」と語った。 破壊された港を見下ろす建物の屋上にある小部屋で、ジャシムさんと夫は、4人の子どもと共に床で寝ている。 ジャシムさんは数年前、安全を求めてシリアから隣国レバノンに逃れて来た。今は、この国にずっと住みたいかどうか分からなくなってきた。 「シリアの状況が落ち着いたら家族で帰るかもしれない」と話した。 ジャシムさんは帰国を望んでいるが、ミネイミニさんは自国レバノンを出ることを考えている。 「この国にいても、私と家族には未来がない。生き延びたらの話ですが」とミネイミニさんは語った。 映像は女児を出産したシリア難民のジャシムさん家族や、移動診療所での検診の様子。9月18、23日撮影。(c)AFPBB News