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CLO市場の二番底リスクに警鐘を鳴らす日本の金融当局

配信

NRI研究員の時事解説

大手行の保有するCLOの約4分の3は「満期保有目的」

日本銀行と金融庁は6月2日、日本の金融機関による海外クレジット投融資の動向を合同調査した結果を公表した。海外クレジット投融資の中で特に注目を集めているCLO(ローン担保証券:レバレッジドローンを裏付けとする証券化商品)については、日本銀行が過去の金融システムレポートなどで示した判断に近いものだった。 それは、「大手行が保有するCLOの99%が最高格付けのAAA格トランシェであることから、ローンの焦げ付きで元利払いが毀損するリスク、つまり信用リスクは小さい。しかし、市場価格の変動リスクは相応にある」というものだ。 3月に金融市場が大きく混乱し、CLOのAAA格トランシェの価格も下落したことを踏まえて、報告書では「二番底のリスク」を十分に意識するようにと、警戒的なトーンでリスク管理を日本の金融機関に求めている。 世界のCLOの残高は、2018年末で82兆円に及ぶが、その中で日本の金融機関のシェアは18%に及んでいる。さらに既に述べたように、大手行が保有するCLOの99%が最高格付けのAAA格トランシェであり、その比率は米銀の77%、英銀の50%強と比べて際立って高く、保守的な投資姿勢を裏付けている。 また今回の報告書では、大手行の保有するCLOの約4分の3は「満期保有目的」に区分されていることが確認されたとしている。期中で価格が下落しても、減損損失を計上する必要性は簡単に高まらず、また、満期まで持ち切れば売却時の損失は生じない。

CLOを保有する欧米のノンバンクが危機の主体に

5月27日に決算発表を行った農林中央金庫は、3月末のCLOの保有残高が7兆7,000億円で、すべて満期保有目的のAAA格だという。保有するCLOの価値は4,000億円程度、約5%目減りした。しかし、すべて満期保有目的であることから、減損損失が必要なレベルには程遠い、と説明している。 CLO市場は3月に大きく調整した後、価格の戻りはかなり鈍い。Palmer Square Capital Managementによると、5月29日時点で、米国CLOのAAA格は平均で基準価格を14.4%下回り、A格は50.5%、BB格は76.7%、それぞれ基準価格を大幅に下回っている。価格は3月に大きく下落したまま、あまり戻っていないのである。これは、CLOを保有する世界の金融機関に大きな損失を既に生じさせている。価格が大幅に下落した低格付けのCLOを損切りする動きが、大手の運用機関の間でも広まっている。 価格低迷が持続する中では、時間の経過とともに金融機関の損失が表面化していくだろう。また、再び経済の低迷が価格下落の第2波を引き起こし、金融機関に新たな損失を生じさせる可能性もある。ヘッジファンド、ミューチュアルファンド、ETFなどの投資ファンドでは、顧客からの解約・換金要求に応えるために、保有するCLOの投げ売りを強いられ、それがCLOの価格下落に拍車をかける事態も考えられるところだ。 CLOは今後も金融危機・不安の震源地となる大きなリスクを抱えている。その場合、格付けの低いCLOを大量に保有している欧米の投資ファンドなどノンバンク(非銀行金融機関)が、危機の主体となりやすい(コラム「CLOなど高リスク資産から生じる世界の金融機関の大規模損失の推定」、2020年5月27日)。