ネット上では批判指摘も。ボクシング界が乱発する“非ボクシング“撲滅に共同声明を発表した理由とは?
(1)は、JBCルールの第2章「ライセンス」の第12条にある「すべてのライセンス所持者は、JBCによる特別の許可がない限り、他のプロスポーツまたは他の格闘技関連団体に関与もしくは従事すること(非公式試合への出場を含む)はできない」というルールの厳守。AbemaTVの「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」の挑戦者決定のオーディションが日本プロボクシング協会に加盟している井岡弘樹ジムで行われたが、そういう関与、協力を厳格に禁じようというもの。もちろんJBC発行のライセンス保持者は”非ボクシングイベント”へ出場もできない。今回、天心対亀田企画の解説からプロジム経営者の薬師寺保栄氏が降りたのも、そういう理由。関与した場合はペナルティが科せられる。 (2)については、声明の中にも書かれているが、”非ボクシングイベント”が安全性、健康管理、公平性などが何も担保されていない中で行われているということへの危惧。メイウェザー対天心戦は、エキシビションマッチだったが、5階級ほどの体重差がある中で行われ”残酷なKOショー”となった。階級競技の本質から外れたマッチメイクだったが、ボクシングと名乗っている以上、一般の視聴者に「ボクシングは危険」とのイメージが浸透する可能性があり、ただでさえボクシング人口が減り、低迷している状況にあるボクシング界がさらなるダメージを被る危険性があった。 またAbemaTVの一連の「1000万円企画」では、元3階級制覇の亀田興毅氏が、ボクシング未経験者を本気で相手にしたり、前回の天心企画でもユーチューバーや芸能人のマネージャーなどのボクシング未経験者が、まるで喧嘩のような殴り合いをしていた。 プロボクシング界は競技性を維持するためにプロテストを行って技術をチェックし、計量、試合前後のメディカルチェック、CTスキャンの実施などの厳しい健康管理を行って競技を運営している。近年、体重超過が目立つが、JBCは厳格な新ルールを設定。IBFは、当日計量を義務づけている。その一方で同じボクシングを名乗る”非ボクシングイベント”では、体重を含めたルールが曖昧な上、素人が殴り合い、もしなんらかの健康被害でも起きれば、ボクシング界への影響は測りしれない。プロボクシングは喧嘩でなくルールのあるスポーツ。“ボクシングもどき“とは一線を引き明確に伝える必要があるというのが(2)の主旨だろう。 (3)は、ボクシング界の今後に向けての指針だ。”鎖国”をしている時代ではないことを理解し、門戸開放を進める考えがある。条件は正式な手続きを踏んでもらいたいということ。つまり「格闘家がボクシングイベントをやりたければプロテストを受験してライセンスを取得した上でやってください。発行する準備はありますよ」ということなのだ。現状のJBCルールでは、他プロスポーツとの兼任を禁じているが、「特別の許可がない限り」の一文があり、その「特別の許可」の範疇で処理することも可能だろう。天心がボクシングライセンスを取得すれば、キックとの二刀流が許可されるかもしれない。 メイウェザーがUFCの2階級王者、コナー・マクレガーとボクシングルールで対戦した際にもマクレガーはアスレチックコミッション発行のボクシングライセンスを取得していた。現在、JBCルールの中に「エキシビションマッチ」というカテゴリーはないが「公式試合場におけるスパーリング」というものがある。今回の天心対亀田にしても、天心のボクシングライセンスの取得、興行をするためのプロモーターライセンス取得などの正式な手続きを踏めばJBC管轄の「スパーリング」として行うことができたのかもしれない。その場合は、JBCがレフェリー、インスペクター、専属医師などを用意し、試合前後の健康管理にも配慮したイベントとなり安全面は担保されることになる。