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維新、吉村人気で関東へ再進出、目黒区長選で票上積みに成功

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【小塚かおるの政治メモ】7月5日の都議補選は吉村選挙に、全国的政策は見えないが

 大阪府の吉村洋文知事の人気がうなぎ上りだ。5月に行われた毎日新聞の世論調査で、2度続けて「最も評価している政治家」の1位。あくまで「新型コロナウイルス対応」を巡る評価を問う設問ではあったが、回答者の3割以上が吉村氏の名前を上げ、2位以下を大きく引き離した。  吉村氏が副代表を務める日本維新の会は、国会議員26人が所属するもののその選挙区は関西圏が圧倒的で、これまで「大阪の地域政党」の域を出なかった。だが、新型コロナ禍の「吉村人気」により、今後は全国区へ躍り出るのか? 東京都の小池百合子都知事とセットで「東西首長連合」の国政殴り込みを煽る論調もある。そこで、吉村人気が本物なのかどうか、冷静に考察してみたい。  実は、毎日新聞の世論調査を先取りする出来事が4月に行われた東京・目黒区長選で確かにあった。区長選に関わった維新関係者がこう話す。  「『吉村知事、頑張ってるね』と声を掛けられることが度々あり、効果は絶大でした。2000~6000近い票の上積みができたと見ています。『吉村=維新』の回路が繋がり、ようやく『東京でもいけるのではないか』という機運が出てきています」  区長選は自民・公明が推薦する現職、立憲民主や共産などが推す前区議、そして維新公認の医師という三つ巴だった。もっとも、維新の医師は無名のうえ、維新の足場が弱い東京の、それも投票率の低い区長選では歯が立たず、泡沫になってもおかしくなかった。  ところが、維新は「吉村知事」を徹底して前面に出す選挙戦を展開。候補者の選挙カーを先導する車には吉村氏のポスターをベタベタ貼り、スピーカーからは吉村氏が支持を訴える録音音声を流した。候補者のポスターを選挙期間の途中で吉村氏との2ショットのものに張り替えるという奥の手まで使った。  結局、選挙結果は現職が3万178票で当選したが、維新は1万8588票と善戦した。  東京維新はこの勢いに乗れとばかりに、東京都知事選(7月5日投開票)と同時に行われる東京都議会議員補欠選挙でも「吉村選挙」を展開。すでに街中に貼られている政党ポスターや街頭活動で、吉村氏の顔写真が使われている。例えば東京都北区を選挙区とする都議補選(定数1)には、自民、立憲民主、維新、都民ファーストの会の4人が出馬を予定。ここで維新がどこまで票を伸ばせるかが試金石となる。  さて、こうした維新の動向を永田町の選挙のプロはどう見るか。  自民党系のプロは「次の国政選挙で維新が首都圏でブレイクするかどうかは、都議補選が1つのバロメーターになる」と注視してはいるが、「第3極の域を出ないだろう」と次のように解説した。  「一過性の伸びはあるだろうが、維新が全国区になるのなら、橋下徹氏が党首の時になっていたはず。その当時と比較しても爆発力は感じません。いま吉村知事は、大阪での新型コロナ対策を語るから人気がある。東京や全国に向けて何を語るのか。長年力を入れる『大阪都構想』以外に、訴えるネタがないのではないか。国政の政治家や野党への不満が高まる反動で、知事など地方のリーダーが注目を浴びるのはよくある話です」  過去を振り返ると、2000年初頭の森喜朗政権が支持率1ケタのジリ貧に落ち込んだ際、当時、東京都知事だった石原慎太郎氏率いる「石原新党」結党に期待感が高まった。2012年に民主党政権が失敗した際に登場したのが、大阪市長だった橋下氏を党首とした「日本維新の会」だった。2017年総選挙では、自らの舌禍で大惨敗を喫することとなったものの、東京都の小池知事の「希望の党」にスポットライトが当たった。  つまり、地方のリーダーは、政権批判の受け皿となる野党が弱すぎる時に「救世主」として注目を集めるものの、維新が自公政権を脅かすような存在にはなり得ないし、あるとしても政権の補完勢力として連立を組むぐらいで、第3極の立ち位置は変わらないだろうと、いうことだ。  ただし、野党系の選挙のプロは危機感が強い。 「過去、維新は関東進出に失敗してきました。それは執行部が関西に力を入れ、東京を事実上、捨てていた、という事情があります。昨年の参院選でついに東京でも議席を獲得し、さらにここへきての吉村知事人気。維新があらためて本気で東京に乗り出して来たら怖い。野党にとっては死活問題です。少なくとも今の立憲と国民が1つの党にならない限り、野党は壊滅的でしょう」  そもそも吉村人気はメディアが過剰に作り上げた側面は大きい。安倍政権は新型コロナ対策で失策の連続。そうなると「国vs地方」という分かりやすい構図が生まれる。メディアは自分の言葉で独自の方針を打ち出す吉村氏や小池氏を評価した。  ただ、吉村氏や小池氏にも問題はある。大阪は「大阪府市の二重行政解消」の名の下に、維新の政策によって病院が統廃合された結果、ベッド数が減ってしまっていた。今回医療体制に苦労した要因として、過去の施策を再点検すべきだろう。また小池氏についても、新型コロナ対策で熱心に旗を振り出したのは東京五輪延期が決まった後だったということは忘れてはならない。もっと早く対応すべきだった。こうした批判されるべき点は多々ある。  いわば「知事ブーム」を落ち着いて見極める目が必要である。 ■小塚かおる(日刊現代第一編集局長) 1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。

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