乱高下激しい"トランプ銘柄"、安易に手を出すのは危険?
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。(最新のドル円相場は こちら ) ■トランプ氏が勝利した後のチャートは? 心配材料だった大統領選挙が終わり、投資家たちはほっとしています。ドナルド・トランプ氏が獲得した選挙人は312、カマラ・ハリス氏は226に及び、一般投票でもトランプ氏がハリス氏を約324万票上回って、トランプ氏の圧倒的な勝利となりました。(データ:FOXニュース) 株式市場にとって心配材料がなくなることは良いことです。S&P500指数の日足チャートを見てみましょう。 50日移動平均線割れが起きるかもしれないという心配がありましたが、選挙の当日(11月5日)は1.23%の上昇となり、ヒゲのない強い陽線が形成されました。 正に、50日移動平均線のテストに成功したという様相です。選挙の翌日はマドを開けて寄り付き、史上最高値で大引けとなりました。S&P500指数は、選挙後の5日間で3.48%の上昇です。 ■トランプ銘柄の過去1年の動きを読み解く トランプ銘柄として注目されていたひとつに、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ( DJT )があります。まず、全体的な動きを把握するために、過去1年間の様子を見てみましょう。 乱高下を繰り返す荒れた値動きです。過去1年間の高値は79ドル38セント(3月26日)、そして安値は11ドル75セント(9月24日)ですから、半年で株価は80%を超える下げとなりました(11月12日の終値は30ドル47セント)。 トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは、順調なキャピタルゲインを求める投資家には不向きな株ですが、チャートにはニュースを素早く織り込む動きが所々に見られます。 一例をあげましょう。思い出していただきたいのは、7月13日(土)に起きた暗殺未遂事件です。 ペンシルベニア州での集会中にトランプ氏は銃撃され右耳を負傷しました。倒れたトランプ氏は直ぐに立ち上がり、シークレットサービス警護員に支えられながら、右手で拳を作って頭の上に振り上げ「闘え、闘え、闘え!」と群衆に向かって叫びました。 トランプ氏の右の頬は血に染まっていました。この奇跡的な光景は、どんな選挙運動よりも強力であったことは言うまでもありません。 ■暗殺未遂が投資家たちに与えた心理的影響 週明け7月15日のトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの動きを見てみましょう。 2つのボリンジャーバンドを入れました。真ん中の線は20日移動平均線になり、2本の上限バンドと下限バンドは、±2σそして±3σ離れたところに引かれています。σ(シグマ)の見方は、下記のようになります。 ・株価が±2σに収まる確率:95.4%・株価が±3σに収まる確率:99%暗殺未遂の前日(7月12日)、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは30ドル89セントで取引を終了しました。位置的には、株価は20日移動平均線より下にありますから、短期トレンドはダウントレンドです。 月曜日(7月15日)は、金曜日の終値を49.5%上回る46ドル20セントでスタートとなりました。AとBで分かるように、+2σと+3σに位置する上限バンドを一気に越えての寄り付きです。 99%の株価は±3σに収まるという統計学を無視した値動きですから、暗殺未遂の報道が投資家たちをいかに感情的にさせたかが分かります。 暗殺未遂という稀なニュースでしたが、株価は急速にそれを織り込みました。高かったのは寄り付きだけで、強い買いの後続がないことを知ったトレーダーたちは売りにまわり、形成されたのは陰線です。 ■乱高下が激しい銘柄に手を出すのは危険? 最後にひとつ質問します。 私たちは、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループのような荒れた株をトレードするべきでしょうか? もちろん、絶対に正しいという答えはありませんが、私は荒れる株はやらないようにしています。トレードの対象にするのはトレンドが明確な株で、その一例がドアダッシュ( DASH )の日足チャートです。 荒れた動きはなく明確なアップトレンドです。A、B、Cの部分で分かるように、上昇する20日移動平均線がサポートになっています。このように、売買のポイントが分かりやすい株を選ぶことをおすすめします。 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳