斎藤氏と工藤氏有力も。どうなる日本野球殿堂!
昨年度は、楽天の星野仙一球団副会長(68)のエキスパート部門での殿堂入りが有力視されていたが、当選に必要だった81票以上を得ることができず53票で4位。1位は、故・榎本喜八氏の66票で、2位が平松政次氏の63票、3位は権藤博氏の57票で、いずれも規定の票数をクリアできなかった。エキスパート部門は、2008年、2012年も該当者がなく、過去8年間に表彰されたのは、故・青田昇氏、故・江藤慎一氏、故・皆川睦雄氏、外木場義郎氏の4人だけ。票割れの原因は、投票資格者の顔ぶれが例年ほぼ変わらず、各自が持っている選出基準にもそう変化がないため、ここ2年は同じ展開が続いているものと推測される。 2013年以降は投票の資格者を増やし、連名記入も3人から5人とし、逆に候補者の人数を絞るなどの規約変更を試みてきた。その効果があってか、榎本氏、平松氏は、着実に票を増やしているが、もし今回も落選ということになれば、再度選出方法が見直しされることになるだろう。 ちなみに榎本氏は、毎日、大毎、オリオンズなどで通算2314本安打を放ち、対戦経験のある往年の名投手達が口を揃えて「史上最高のバッター」と評する安打製造機。晩年に奇行が目立ち、球界に残らなかったため、殿堂入りチャンスがないまま4年前にこの世を去った。平松氏は、大洋のエースとして剃刀シュートを武器に通算201勝、そのうち51勝が巨人から挙げたもの。筆者は、記録も記憶も殿堂入りにふさわしいと考える2人だ。
過去に殿堂入りされなかった名選手の栄誉復活の意味も込めたこの制度は、もちろんメジャーが先駆なのだが、そのメジャーでも、選出を担うベテランズ委員会の構成や選出方法が何度も議論され変更されている。偏向した選出や、票が割れ該当者無しになる年が続いたことが、メディアなどを巻き込んでたびたび大きな問題になってきたのだ。 悲しいかな、日本では、過去に落合博満氏の落選や、故・津田恒美の選出、昨年度はプレーヤー表彰資格の最終年だった原辰徳氏の表彰漏れなどが問題視されたことはあったが、エキスパート部門の2年連続該当者無しの問題は、そう議論の対象にはならなかった。 委員会の内輪では、例年、東西で積極的な議論が行われているという。投票資格者を野球記者クラブ内だけに留まらず雑誌記者にも広げてもいいのでは?という意見まで出ているとも聞くが、今回も該当者無しとなってしまった場合、もっと開かれた議論を展開してはどうだろうか。 選出基準の曖昧さの議論も含め(というか曖昧であるべきであるのが筆者の意見だが)、日本の野球殿堂が、さらに注目を集めるためのプロモーション活動をもっと工夫して行うべきだろう。日本のプロ野球の輝く未来のヒントは、先人の功績や努力に隠されているはずなのである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)