ワークマンは「8800円ランドセル」で勝負…「過去最悪の少子化」でも異業種がランドセル市場に続々参入するワケ
ワークマンやモンベルなど、ランドセルメーカーでない企業がランドセル市場に新規参入するケースが増えている。少子化の時代になぜランドセルなのか。ライターの南充浩さんは「2023年の出生数は72万7000人で過去最少を更新したが、企業にとっては、ほぼ同じ数のランドセルが必ず売れる『とてもおいしい市場』に映る」という――。 【写真】ワークマンが発売している8800円のランドセル ■ランドセル業界への新規参入が増加 2020年以降、「布製ランドセル」という商材で異業種から新規参入したという報道を業界メディア、経済メディアで数多く見かけるようになりました。 直近ではワークマンの「ESスチューデントデイパック」でしょうか。2022年にはアウトドアブランドのモンベルが布製ランドセルに新規参入しました。現在54歳の筆者が子供だった約半世紀前、筆者の子供たちが小学生だった約20年前に比べると、ランドセルという商品は随分とデザインや素材が多様化したと感じます。 今回はランドセルについて考えてみたいと思います。 ■昔は「男は黒、女は赤」で固定化されていた 筆者が子供の頃のランドセルというと、合皮素材で男児は黒、女児は赤というのがほとんど固定化されていました。それが20年くらい前になると、合皮素材は変わらないものの、男児女児ともにカラーバリエーションが格段に増えていきました。 男児は黒だけでなく、茶や紺がありましたし、女児は赤以外にもピンクや水色がありました。実際に私の娘は水色のランドセルを使っていました。 時代が進んで2010年代後半になると素材も合皮一辺倒ではなくなり、スポーツバッグやリュックに使われるような合成繊維生地が使われたランドセルが増えてきました。その代表例が2022年に発表されたモンベルのランドセルだったり、今年発表されたワークマンのランドセルだったりということになります。
■教科書、タブレットで荷物が重たくなっている ランドセルが多様化してきた理由はさまざまありますが、大きいものは2つあると考えています。 ---------- 1、軽量化の追求 2、低価格化の追求 ---------- まず、軽量化についてです。 以前から、小学校低学年の児童にとっては、教科書・ノートがフルに入った状態でのランドセルは非常に重たく感じられると言われてきました。実際に私もその当時重いと感じていました。 教科書を発行する企業でつくる「教科書協会」によると、小学校6年間で使う教科書の総ページ数(平均)は、2005年は4857ページでしたが、2020年には8520ページと約75%増えています。学習指導要領の改訂や、イラストを増やすなどより見やすいレイアウトに変更した結果だといいます。 教科書やノートの重さは簡単には変えられないので、軽量化するのであればランドセル本体を軽量化せねばなりません。 この軽量化の追求がさらに活発化したのは、タブレット端末の導入が契機になっていると考えられます。どんなに薄型のタブレット端末でも、小学生にとっては結構な重量となります。 タブレット端末導入によって、児童が持ち運びする荷物の重さは、筆者が子供の頃より格段に増加しているのではないかと思います。子供の荷物の重さはだいたい1~1.2キロくらいの重さが望ましいと言われています。ノート型パソコンもそうですが、1.5キロに達するとかなり重く感じますのでランドセルも同様でしょう。 ■物価上昇で「安いランドセル」に脚光 次に低価格化です。 筆者の子供が小学校に上がる20年くらい前、私は確かイオンの自主企画製品のランドセルを約3万円で買ったと思います。現在、イオンのインターネット通販サイトで確認すると3万5000円になっています。20年前、「天使のはね」(セイバン)や「フィットちゃん」(ハシモトBaggage)のようなブランドランドセルは当時で5万数千円から6万数千円くらいしていたという記憶がありますが、現在では6万3000~7万円台になっています。 筆者には3人の子供がいました。3万円台の自主企画商品ならまだしも、6万、7万円台の「天使のはね」「フィットちゃん」などのブランドランドセルを全員に買い与えることはなかなか難しいことでした。 ランドセルはもともとそんなに安い価格ではありませんでしたが、デフレ下にもかかわらずこれまで年々値上がりしてきました。日本経済は2022年から海外の状況に押されて物価上昇が鮮明化しました。そうすると、すでにある程度高額だったランドセルがより高額になるため、さすがに買いづらいという家庭が増えたという体感があります。 物価上昇が始まり、それにつれて給料も上がっていますが、健康保険料や年金などの社会保険料の総額も上がっているため、可処分所得は増えていないと感じる人が増加しています。そうなると、おのずと低価格商品を求める声も大きくなります。それを反映したのが、モンベルでありワークマンであるといえるでしょう。 ちなみにモンベルのランドセル「わんパック」は最もサイズの小さいもので税込み1万4850円、ワークマンのランドセル「スチューデントデイパック」は税込み8800円という安さです。