課題に対する「解像度の高さ」こそ事業成長に必須。資金調達を成功させるスタートアップの条件
投資判断を下すポイントは「課題に対する解像度の高さ」
中村氏はビジョンとの関係だけでなく、ブイクックの工藤氏に出会ったときに惹かれたポイントとして「課題への解像度の高さ」も挙げる。 中村氏「社会起業家は、そもそもどんな社会課題を解決するのかが先にあり、そこにビジネスとしてどうアプローチしていくのかという順番になります。そのため、最初の時点で『こういう社会課題を解決したい』という思いがないと続けていくのは難しいんです。その点、彼は自分自身がヴィーガンであるがゆえに、課題への解像度がものすごく高かった。さらに日本全国のヴィーガンの方々を訪ね、課題を直接伺い、その声をもとに自社のサービスをすぐにアップデートする行動力にも驚かされました。社会課題は顕在化しているにもかかわらず、解決に至っていないケースが少なくありません。そのような深刻な課題を解決するには、表面的な解決策ではなく、より深い洞察に基づいたアプローチが求められるため、課題への解像度を高めることが重要となります。課題への解像度が高まるほど、共感し参画してくれる仲間やステークホルダーなど関係者の質も上がりますし、より多くの人や資金を集めるための説得力につながっていきます」
さらに、解像度を上げるために課題を深ぼるほど汎用性が高くなり、事業の拡大にも通じると話す。 中村氏「例えば当社が投資している会社に、『デジリハ』という障がいの有無に限らずリハビリサービスを展開する会社があります。障がいには等級があり、『この等級以上だとリハビリが必要ですよ』と言われます。デジリハが現在ターゲットとしているのは主に日本にいる重度障害児と呼ばれる方になります。しかし、課題を深く掘り下げていくと、本来のリハビリは、うまく体を動かせない状態にある人の可能性を引き出し、その人の能力を最大限に伸ばすことであるという思想に行き着くんです。その結果、障がいの有無に限らず、国境や年齢という制限がなくなることで、サービスの対象者が大きく広がります。このように、課題の解像度を上げながら本質に近づくほど、事業を拡大できるわけです」 そのほか、投資判断を下す際に重要視している要素として「事業をやめないこと」「拡大志向を持っていること」も大事だと言う。 中村氏「社会課題の解決は、長期的な取り組みになってくるため、やめないことが重要です。また通常、VCは事業拡大を前提に投資を行いますが、私たちの投資対象となる企業は、社会課題の解決を目的としているため、拡大はあくまでも手段です。とはいえ、そういったなかでもtalikiファンドの運営をはじめとした投資事業においては、やはり投資家から資金をお預かりしている以上、一定の規模への拡大は必要不可欠であると考えています。それが社会全体に対するインパクトの大きさにもつながるため、より多くの人々を課題解決へと導くことに繋がります」